Picture of My Life エッセイ⑧ – 新しい家族 上田順平

Reminders Photography Stronghold Galleryはいよいよ今年の11月に4周年を迎えます。今年の記念企画展には上田順平 写真展『Picture of My Life 』を開催いたします。上田順平は2015年度にRPSにて開催されたPhotobook As Objectワークショップで写真集プロジェクト「Picture of My Life」に取り組みました。およそ一年以上をかけて完成した本の刊行および写真展になります。この展示に先駆け、展示作家上田順平によるエッセイの連載をしております。第八回目は「新しい家族」です。

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写真で食べることを諦めた僕は27歳の時に、家業の運送会社で兄と一緒に働きはじめた。
「社長はええ男やった。震災の時なんか1番最初に自分でトラックにのって、神戸に新聞持って行ったんや。あん時、神戸に新聞つけたんはうちの会社だけやったんやぞ。」「アケミさんが自殺して社長が後追いはったときはびっくりしたけど、まあしゃーないわ。あの2人仲よかったもんな~。」職場の人たちは僕の知らない父の話を聞かせてくれた。僕は両親の自死を隠す必要がないこの場所に救われた。新しい家族をつくれば何かが変わるような気がしていた。

30歳のとき、知人の紹介で香織と知り合った。控えめだけどしっかりと自分の意思をもった美しい女性。おおらかで細かいことを気にしない所が母に似ているかもしれない。 彼女も僕のことを気に入ってくれて、2010年に僕らは結婚した。

翌年の春、香織は妊娠した。大きくなっていく妻のお腹を見ていると無性に写真を撮りたくなった。目の前を残したい一心で出産に立ち会い、新しい命の誕生を写真に収めた。当たり前すぎて忘れていた僕の中の欠落がゆっくりと埋まっていく。絶望に引きちぎられ、失っていた臓器が新しく造られるような感覚。娘を見る僕の眼差しは両親が僕を包んでいたものと重なる。僕はこんなにも愛されていたんだ。

—-第九回へ続く。

これまでのエッセイを読む:
Picture of My Life エッセイ① – 父の絵 上田順平
Picture of My Life エッセイ② – 両親 上田順平
Picture of My Life エッセイ③ – 逃避旅行 上田順平
Picture of My Life エッセイ④ – 悪い夢 上田順平
Picture of My Life エッセイ⑤ – 死の淵 上田順平
Picture of My Life エッセイ⑥ – 家族アルバム 上田順平
Picture of My Life エッセイ⑦ – 写真学生 上田順平

こうしたエッセイも含む写真展に関する情報はフェイスブックで随時更新しています。https://www.facebook.com/events/886439928152952/
写真集’Picture of My Life’のご予約受付は終了しております.