REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #22 SCRAP BOOK

09/14/2015

記憶の再構築：木村肇「Scrap Book」

木村肇の「Scrap book」は、北日本の伝統的なマタギの村で撮影されたモノクロ写真の多くの切り抜き、そして彼自身によるドローイングで構成されている。この本はまず見るものを日本の秘密の核と出逢わせるが、実際は木村の回想のプロセスの痕跡を見せてくれる。

この本は近代化のしるしも見えないようなマタギの村の生活のドキュメンタリーとしてすでに成功しているように思える。北日本の村出身の者として、私はあっという間に忘れられたような村の生活の馴染み深い光景に引き込まれた。内藤正敏の撮ったような老婆たち、家畜、夜の樹、雪をかぶった田んぼ、暗い家。これらのイメージは、閉鎖的なコミュニティへの若いストレンジャーとしての木村の視点を通し、何世紀も受け継がれた熊撃ちの伝統への彼の旅へと我々を導いていく。

木村の「Scrap book」のページを繰りながら、見るものはこれがマタギの伝統の単なるドキュメンタリーではなく、彼のその場所での記憶の再構築への試みであることに気付くかもしれない。私はこのことにタイトルを読んだ時、そしてトラベルノートのようなフォーマットを見た時にすでに気づいても良かったのだ。イメージはフリーハンドで切り抜かれ、ページ上に自由に配置されている。ある種の粗さを求めて、写真はすべてゼロックスで出力され、さらに荒くこすられている。彼はまた日記の1ページ、熊、ビール瓶、ゴム長、わらびなどのドローイングも挿入している。木村によるこれらの多くの手作業により、我々は後に再構築された記憶の回想をより触覚的に体験することができる。

「Scrap book」は美しく製本されたハードカバーであるが、読み込むうちに木村が生のダミーをどのように製作したかを想像できるようになる。彼は写真とドローイングのアーカイブをくまなく調べ、本能的にセレクト、エディットをしたのであろう。まるで記憶の断片を拾ってはアレンジし直し、記憶の新しいレイヤーを作るように。

奥山美由紀（写真家）

※この本のお取り扱いはRPSでは終了しています。

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