REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #8 Ponte City

RPS写真集図書室ブックレビュー、写真家でRPS所長の後藤勝が今回取り上げるのはこちら。

ミハエル・ソボツキーのPonte Cityです。

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ミハエル・ソボツキーの写真集“Ponte City”は、17冊のZineと一冊の写真集から成り立っている。プラモデルの外箱のような箱に収められ、一見写真集とはわからない。写真集をめくると、エレベーター内で撮影された住民のポートレイト、電気の無い廊下や地下らしき薄暗い部屋でたたずむ黒人達の姿、ファウンドフォトらしき得体の分からない人物写真、廃墟と化した部屋で暮らす家族の姿があり、そして選挙運動の時の宣伝だろう、政治家達のポートレイトがある。

Ponte Cityとは南アフリカのヨハネスブルグに建つ高層アパートメントの名前だ。1970年代に建てられた54階のビルで、丸く円形状のデザインは中心部が空洞となり、市内でひときわ目を引いた。流行のブティックや室内スキーショップなどの店舗もあり、市民の憧れの存在になった。

しかし政治的な混乱と共に、Ponte Cityは次第に寂れていく。空き部屋にはホームレスが住み込み着き、階段には客を待つセックスワーカーが溢れた。そこはドラッグ売買の巣窟になり、ビルの象徴だった円形上の空洞はゴミの山で埋まっていく。

南アフリカ生まれの写真家ミハエル・ソボツキーは、2000年後半からPonte Cityの撮影を始めた。撮影というより、そこで暮らす人々の実態を調査する目的で、このプロジェクトを始めたという。

写真集にはキャプションが無い。その代わりに、17冊のZineの内容は、写真をテーマごとに分けて説明を付けている。写真集とそれらのZineには、南アフリカの歴史や今までの白人と黒人との関係性、そして現在この国が抱える社会問題が表現されている。

ミハエルは言う。
「写真という技法は、僕らの知らない世界を理解するために、存在する」

後藤勝(写真家、RPS所長)

 

これまでのフォトブックレビューはこちら
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