REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #10 ANTIPERSONNEL

RPS写真集図書室ブックレビュー、今回写真家の八尋伸さんが取り上げるのはこちら。

Raphael Dallaporta の ANTIPERSONNELです。

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ANTIPERSONNELとは直訳で対人用、antipersonnel bombs(対人地雷)の対人に当たります。その名の通り、対人地雷の写真集です。かつてのカンボジアの独裁者ポルポトは地雷を完全な兵士と賞賛し内戦で大量の地雷が使用されました。今でも各地の紛争地帯に行けば使用され、人間が解除しない限り残り続けその上を通るものを殺傷するという負の遺産を今でも生み出しています。

ページを開くと対人地雷だけの静物写真だけで構成されているのに意外な印象を受けます。写真集というよりカタログに近い感じも受けます。

真っ黒な背景にシンプルなライティングで見せられる様々な対人地雷の写真は形状や素材の質感がよく写っており、美しいオブジェの様な地雷、おぞましい形をした地雷、子供の工作のような地雷を見ると人を殺傷するためだけに作られたモノの背景が見えてきそうです。そしてその人を殺傷するためだけにどれだけの地雷作成者達のエネルギーが使われたのか、それにも感心もしますがやはり狂気も感じさせられます。

その背景というものは地雷の写真と少しのキャプションによって見る人の想像力に完全に委ねられますが、シンプルな構成でこれほどまでに見る人の想像力を喚起させる写真集も少ないのではないでしょうか。そしてそれこそが写真の原点とも言える記録性の力なのだと思います。

そして私達は普段地中に埋まっている地雷というものを目にする機会が全くと言っていいほど無いことに気が付かされます。地雷による犠牲者や非人間性を私達は見る機会があったのかもしれないが、地雷そのものをまざまざと見せられるという経験はなかなかある機会ではないのでしょう。

そして戦争の負の遺産としてシンボル化した地雷を美術品の様に掘り起こし、捉えた作品は、私達の地雷の汚れたイメージと作者の美術品の様なイメージとのギャップを本能的に埋めようとすればするほどこの作品について考えさせられるのでしょう。

八尋伸(写真家)

これまでのフォトブックレビューはこちら

◎reminders photobook review #1 NUOTRAUKOS DOKUMENTAMS / PHOTOGRAPHS FOR DOCUMENTS レビュアー:後藤勝(RPS所長)
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◎reminders photobook review #3 PIECES OF BERLIN 2009-2013 レビュアー:木村肇(写真家)
◎reminders photobook review #4 Blind Date レビュアー:八尋伸(写真家)
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◎REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #7 FIELD TRIP レビュアー:幸田大地(写真家)
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