2月24日午後7時~【千本ノックの夜:共有とドキュメンタリーのあり方】対談:鈴木萌X寺澤将幸

昨年8月にReminders Photography Strongholdで好評を博したトークイベント「千本ノックの夜」。第2夜を新たな登壇者を迎え開催します。

このイベント「千本ノックの夜」は、奥深い写真表現を日本の写真家や愛好家に広めたいと始めた企画です。RPSであらゆる視覚芸術作品の読み解きを課題とする記事「眼光紙背を磨く」の執筆者を、RPSで展示中の作家が対談相手に迎えて開催する対談イベントになります。写真や視覚素材を使って物語を伝えてみたいとお考えの方から、作家ではないけれど写真の読み解きの一つのあり方を知ってより鑑賞を楽しみたいという方まで、幅広く参加していただけたらと願っています。作家がドキュメンタリーを世に出す目的は何でしょうか。読者に課題を認識してもらう、解決への行動に移してもらう――。一時期、インターネットでは「共感」が合い言葉のように使われましたが、最終的に読者が必ずしも同じ感覚を抱かずとも、まずは作者とあらゆる意味での「共有」をするところから始まっていると言えるでしょう。
RPSで写真展「Aabuku」を開催中の鈴木萌と、新聞社の写真編集者である寺澤将幸が、このテーマについて対話します。司会進行はRPSキュレーターの後藤由美です。

鈴木は、2020年発表の「底翳」で表現した緑内障が進行する父親が見る世界から継続して、病や家族関係、都市開発などで変化する記憶の視覚表現に挑戦してきました。2020年より制作が始まった本作は、沖縄県における「有機フッ素化合物」(PFAS)による水や土壌汚染をテーマにした作品となります。3年間に渡るリサーチでデータ的側面の情報収集をするとともに、汚染が判明している水や土地につながりのある人々を訪ね歩き、集めた個々人の記憶から環境汚染の実態やその背後にある社会的構造を捉えようとした作品「Aabuku」を発表しました。

寺澤は、2022年度まで新聞社の写真映像記者として、外国人労働者、発達障がい、東日本大震災などを取材。従来型のニュース写真だけでなく、メッセージ性の強い視覚表現をメディアで実現しようと試行錯誤してきました。昨年からデスク(編集者)となり、デジタルストーリーテリングの強化を心がけています。

後藤はこれまで、作品にふさわしい制作や表現の方法を作家とともに模索し、作品を発展させる上で立ちはだかる課題を示し、完成までを導いてきました。先入観に囚われず、独自の取材やリサーチをした作家と向き合うことで、編集者、キュレーターとして多様なドキュメンタリーのあり方を提示することに努めました。

当日は3人が話すほか、来場者の皆さまからのご質問にお答えする時間も設ける予定です。
会場では鈴木萌写真展「Aabuku」が2/25まで開催しています。
同タイトルのアーティストブックも販売中。


◉日時:2024年2月24日(土)午後7時頃〜(トークの時間は1時間半ほどの予定)、終了後には歓談の時間を設けます。
◉言語:日本語
◉会場:Reminders Photography Stronghold
東京都墨田区東向島2-38-5
◉参加費:無料
※ネット配信はありません。参加ご希望の方は直接会場にお越しください。事前の予約は必要ありません。
鈴木萌写真展「Aabuku」
◎会期:
<東京>2024年2月10日(土)〜 25日(日)13:00~19:00
<京都>2024年5月3日(金)〜12日(日)13:00~19:00
会期中無休、入場無料


登壇者プロフィール:
鈴木 萌
東京都出身。London College of Communicationで写真を学び、2011年帰国。その後独学で製本技術を習得し、ビジュアル・アーティストとしての活動を開始する。主な媒体となる写真を軸に、アーカイブ、イラスト、リサーチ、映像などを織り交ぜ、本やインスタレーションの形で物語を表現しています。時間の経過、環境の変化、障害、コミュニティ内の人間関係などに伴って変容していく記憶や風景をテーマに「底翳」「Today’s Island dismantling」などを制作。前作「底翳」は東京、京都、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、北アイルランド、フランスなど世界各地で展示され、同タイトル写真集はLuma Rencontres Dummy Book Award 2021を始めとする世界のダミーブック賞への入選・受賞経験があります。


寺澤 将幸
1978年生まれ。2005年、日本経済新聞社に入社。東日本大震災の取材を経て、メディアの持てるウェブ表現の多様性を見出し、超高解像度写真、ドローン撮影、VR映像、フォトグラメトリなどの技術をいち早く報道に取り入れてきました。昨年末からは、後藤が提案する視覚芸術作品を読み解き、独自の解釈を共有する「眼光紙背を磨く」の執筆を始めています。


司会進行:後藤 由美
Reminders Photography Strongholdキュレーター