REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #15 UNNAMED ROAD
写真家によるRPS写真集図書室ブックレビュー。今回写真家の木村肇くんが取り上げるのはJUNGJIN LEEのUNNAMED ROAD。
ひとりの人間がある事象にぶつかった時、どのような道を選択するのか。どのようなを筋道を経て乗り越えようとするのか。
この世に生を受けてから亡くなるまでの時間の流れの中で、人は意識無意識の狭間で無数の選択をしながら生きている。きっと自分が強く意識をしなければ、いとも簡単に逃げ去ってしまう様な些細な事も含めて。
例えばこの本の作者の様に、自分とは直接関係のない場所、予期せぬ状況に放り込まれる事でのみ生まれてくる意識が存在する。昨日までの傍観者だった自分と当事者になってしまった自分。その様な宙ぶらりんな意識の状況に於いても、選択肢は常に目の前を通り過ぎて行くのである。
「ある意識を純化して取り出すためには、様々な意識を静めなければならない。」
巻末の言葉の中で、ヨルダン川西岸という地は作者にとって、自分の意識を対象に擦り寄らせる事でのみ、理解出来る可能性がある場所だと感じたのではないだろうか。
重く冷たい扉を開いても見ることの出来ない景色への道。
それは作者自らが選んだ文字通り、「名前の無い道」そのものなのではないだろうか。
木村肇(写真家)
RPS補足情報※こちらの本の作家Jungjin Leeさんの展示がパリの Galerie Camera Obscuraにて開催中です。4/25まで。3/28には午後4時から6時までアーティストが在廊しブックサイニングも予定されているそうです。本も素晴らしいですが、このギャラリーで見れるプリントはさぞかし素晴らしいものだと思われます。期間中にパリにいるという方は是非お見逃しなく。
http://www.galeriecameraobscura.fr/expo_actuelle/gallerie_01/pages/01_jpg.html
Jungjin Lee from Fabrice Nadjari on Vimeo.
これまでのフォトブックレビューはこちら
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