REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #11CHEWING GUM AND CHOCOLATE

10/20/2014

写真家によるRPS写真集図書室ブックレビュー、随分と間があいてしまいましたが、久々のアップです。
今回写真家の木村肇くんが取り上げるのはこちら。東松照明さんのChewing Gum and Chocolate。

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沖縄返還30周年の節目に彼が亡くなったのを知ったのは翌年の2013年、とある美術館で彼の写真を見た時だった。”The pencil of the sun” と書かれたボードの横に同じサイズの写真が50点あまり額装されて整然と並んでいた。いまでも鮮明に覚えているのは全ての写真が当たり前だが日本で撮られていた、という事だった。人によっては何処かアメリカの片田舎の話にも見えたのかも知れない。明らかに日本という言葉のイメージからはかけ離れた状況が数十年前には存在していて、それらは今現在、形を変えながらもそこにあり続けている。
この写真集をめくる度にその時の感情が少しずつ蘇ってくる。丁寧に作られたイメージの羅列は読み手を当時の日本の何処かへとタイムトラベルさせてくれる。そして、間に散りばめられた11の短いテキストの中で、当時の彼が写真家である自分とそうでない自分との間で悩みながら在り続けたこと。「占領」に魅せられた1人の人間がその深淵へと沈み込みながらも、自己のあるべき姿を模索していくプロセスはあるひとつの答えを読み手に提示してくれている様でもある。
「愛と憎悪は紙一重」。彼はそう言い残して最後まで被写体の向こう側を見続けようとしたのである。

木村肇（写真家）

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