REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #13 IN THE SHADOW OF THE PYRAMIDS

写真家によるRPS写真集図書室ブックレビュー、来日していたRPSグラント受賞写真家のラウラ・エル・タンタウィIN THE SHADOW OF THE PYRAMIDSを写真家の木村肇くんがレビューしました。

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自分が普段何を元に考え、何を以って自分であると定義しようとするのか。日常的に意識はせずとも、人間個人が存在する限り、歩んで来た過去やルーツもまた同じだけ存在する。この本の作者であるラウラ・エル・タンタウィはそれを再確認するために自分の場所に戻って行ったのではないだろうか。例えそこが既に自分の知っている場所ではないと分かっていても。

どのような場所で過ごしていようとも、その人を形成している目に見えない何かは、永遠に脱ぎ去ることの出来ない服の様に常にそこに張り付いている。そしてそれは意識しないようにすればする程、強く身体を締め付ける。

彼女は人生の半分以上を故郷であるエジプトの外で過ごしてきた。10代に故郷を離れた事、国を二分するであろう気配の中で自分自信の在り方を確認しようとしていた事、やっと辿り着いた故郷に裏切られたこと、そしてそれを受け入れていく事。それらの一連のプロセスは、ある一つの時間だけを切り取った日々のニュースから想像する事は難しい。国を動かそうとする巨大な集合体の中の無数の点は各々の線を描いて辿り着いたものなのだろう。そしてその点はいつかふたたび新たな線を描きながら進み始めるのである。

ぼくらはこの本を読みながら想像しなければならない。ある一つの点が描き出す線から、そのあまりにも巨大で複雑な絵を。

木村肇(写真家)

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