RPS京都分室:藤井ヨシカツ写真展「凪」4/13-4/28

RPS京都分室パプロルでは、2024年度企画展として藤井ヨシカツの写真展「凪」を4月13日から28日まで開催致します。
藤井は2015年に故郷である広島に拠点を移して以降、広島の戦争の歴史についての長期プロジェクト「ヒロシマ・グラフ」シリーズを制作して参りました。今回展示するのはシリーズ3作目、本編への序章にあたる作品です。第2次世界大戦中、広島県呉市の海軍施設で人間魚雷の製造に従事していたという藤井の祖父の証言を元に、幼少期に祖父と過ごした日々の記憶を回想し、今ある平和への感謝とその大切さを静かに語りかけます。
本展では、先だって発表された写真集「凪」の世界観を再現しながらもギャラリー空間での伝え方も試行錯誤し、より多面的な観点を提示します。期間中イベントなど随時SNSで発信していきますので、ぜひご注目ください。

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

『凪』本作は現在と過去、思い出の風景を行き来しながら、土地とそこに根付いた個人の記憶の関係を背景に、今ある平和への感謝とその大切さを静かに語る。そして本編への序章となる作品である。

私が写真を撮り始めた10年前、何度も何度も海を訪れていた。ただ撮りたいものを気の済むまで撮影していただけなのだが、なぜあれだけ海に執着したのだろうか?その答えを求めて、改めて全ての写真を見返すことにした。
海ばかり写った膨大なネガを見ているうち、なぜだか不意に子供の頃に祖父が語ってくれた戦争体験が呼び起こされた。

-じいちゃんは原爆には負うとらん。
-呉におったけえの。
-海軍よ。
-人間魚雷も作っとった。-そりゃあ何をつくりよるんか教えちゃくれんが、設計図見りゃあ何を作りよるかくらい分かるわい。

子供の頃の記憶だが、初めて聞いた祖父の戦争体験は鮮明に記憶に焼き付いている。しかし、私の撮った海の写真と祖父との記憶が結びついたのかは不明だった。そこで、祖父の人生を辿ってみることにした。

祖父の生活のすぐ側には、いつも海があったようだ。
軍港のまち呉に生まれ育ち、やがて海軍に入隊。戦争末期そこで秘密裏に作られていたという人間魚雷「回天」。そして祖父がその製造に関わっていたのではないかという疑念。 祖父はそれをどう受け止め、戦後を生きたのか。

祖父の人生を調べたり、祖父と過ごした子供の頃の記憶を思い出す度に、祖父の戦争体験が、私の海への執着にまで繋がっていたことが分かってきた。そして、戦争の愚かさといま平和に生きられていることの有り難みを実感せずにはいられなかった。

本作は過去5年間に渡り海で撮影した膨大な写真を用いて制作された。歴史の事実と記憶の狭間を揺蕩いながら、月並みな毎日をこの先も送れるように願う架け橋となる作品である。
藤井ヨシカツ


藤井ヨシカツ 写真展「凪」

◎会期:2024年4月18日(木)〜28日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
<開催期間中のイベント>
写真家によるギャラリートーク等
イベントの詳細、日時が確定次第、SNS等で告知をしていきます。

◎会場:RPS京都分室パプロル
京都市上京区老松町603 

google mapへのリンクは
https://goo.gl/maps/1V5XyJ4kfuDk91F87
最寄りのバス停:上七軒、または千本今出川

問い合わせ:paperoles@reminders-project.org

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

Nagi©︎Yoshikatsu Fujii

 

藤井ヨシカツ | プロフィール
https://www.yoshikatsufujii.com
https://www.instagram.com/yoshikatsufujii/
写真を表現媒体としたビジュアル・ストーリーテラー。記憶、家族、事件や歴史をテーマとした長期プロジェクトに取り組んでいる。
少部数限定の手製本による写真集を主な発表媒体とし、2014年パリフォト・アパチャー財団写真集賞ノミネート、2015年Self Publishing PHOTOLUX Award受賞、2018年The Anamorphosis Prize受賞。ニューヨーク近代美術館(MoMA)図書館やヴィクトリア&アルバート博物館をはじめ、各国の美術館や大学図書館に作品が収蔵されている。
2015年に故郷の広島に拠点を移して以降は、被爆3世である自身の視点から広島と戦争の歴史をテーマとして制作を行っている。
作品は、チョビメラ国際フォトフェスティバル(バングラデシュ, 2017年)、ジメイ・アルル国際フォトフェスティバル「Phantom Pain Clinic」 (中国, 2017年)、ブレダ・フォトフェスティバル「To Infinity and Beyond」(オランダ, 2018年)、PHOTO2021「Not standing still: new approaches in documentary photography」(オーストラリア, 2021年)、KG+SELECT (日本, 2021年)、永春堂美術館「Lived Happily Ever After」(台湾, 2022年) などで展示された。