REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #9 “19.06_26.08.1945”
RPS写真集図書室ブックレビュー、写真家の木村肇くんが今回取り上げるのはこちら。
Andrea Bottoの“19.06_26.08.1945” です。
僕たちは70年前に戻る事は出来ない。そして70年前の情報を当事者の様にイメージするのはかなり難しいだろう。
記憶と記録という似て非なる両者が今日の僕たちの歴史認識を作っているのだとすれば、この写真集はそれを体現しているものだと言えるのではないだろうか。 第二次世界大戦下のナチスによる、ユダヤ系イタリア人の抑留という事象は70年という年月を経て二次元の記号に変わりつつある。あるキーワードから紡ぎ出 される共通認識の画像と当事者のオーラルヒストリーが、僕たちに歴史とは何かを静かに語りかけてくる。歴史を語ろうとする人、語らない人。またそれを残そ うとする人、残さない人。あるイタリア人のおじいさんと孫が創り出した一冊の本はいま、偶然にもある日本人の手元に確かに存在する。
70年後、恐らく僕の世代はこの世にはいない。だが自分たちの記録が遠い時間の海を渡りながらどこかに漂着した時、記号化された過去は再びその姿を現す事が出来るのである。
木村肇(写真家)
これまでのフォトブックレビューはこちら
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◎reminders photobook review #4 Blind Date レビュアー:八尋伸(写真家)
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◎REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #7 FIELD TRIP レビュアー:幸田大地(写真家)
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