写真集エッセイ【ぐるぐるは続く】松村和彦
写真説明:新たに写真集に加えた写真の一部
6月に写真展「ぐるぐる」を開催し、同名の手製本を出版した松村和彦から「ぐるぐる」のその後についてのエッセイが届きました。
人生に伴走する写真についてのお話です。
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写真集「ぐるぐる」は長男の誕生と祖母の死去に向き合うために作った。初めて目の当たりにした命はそれほど鮮烈だった。写真集作りを通じて、命の巡りを実感できた。そして何より、写真と製本が大切な思い出や時間を閉じ込めたようで、少し安心していた。
6月の完成からしばらくして、今度は祖父が急に亡くなってしまった。
祖父は「写真集できたら見せて」と言っていた。その願いを叶えることはできなかった。
ほんのひと時得られた安心感は吹き飛んだ。また一人、家族が欠けて、また一歩、僕はどこかに進んだ。そして、この歩みは止めることができないという現実を再び突きつけられた。
せめてできることは、亡くなった祖父を写真に撮り、何枚かの写真を本に加えることだった。もう作品としての本は作り終えていたが、新たに1冊作ろうと思った。
写真集の締めくくりにこう書いたのを思い出している。息子の泣き顔が自分の子どもの頃にそっくりだったことから書いた文だ。
息子はいつかの僕だ。僕はかつて息子だった。
僕はいつかの父で、父もかつて息子だった。
父はいつかの祖父で、祖父もかつて息子だった。
ぐるぐる ぐるぐる
ぐるぐる ぐるぐる
祖父の写真を加えた写真集。今度、父に見てもらうと思う。
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写真集「ぐるぐる」の動画はこちらで見られます。
12月3、4日開催のアートブックフェア「写真集飲み会」でも展示します。
写真集完成までを綴ったエッセイもあります。
ぐるぐるができるまで① 始まりの始まり
ぐるぐるができるまで② 命名
ぐるぐるができるまで③ 壁、壁、壁
ぐるぐるができるまで④ 赤ちゃんときゅうり
ぐるぐるができるまで⑤最終回 世界を作る