そもそもあの作品は何だったのか(藤井ヨシカツとの最近のやりとりから)
2013年、本に関するイベントがそもそも最初にお会いするきかっけで、作品作りもされているということで、メンターシップを通して作品を拝見するという流れになった。
その時見せてもらったのが「波」を撮影した写真、当時色々と説明を聞いてみたが、同時期に彼が取りかかってた、ご両親の離婚を題材にしたプロジェクトの方に力を入れていくことになった。それがのちに「Red String」という本になって完成する。
「今思えば」とふと気になって、そもそもあの「波」の作品は何だったのか、あらためて聞いてみた。
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藤井さんからの回答はこうだった。
いま住んでいる家は堤防を挟んですぐ海で、20年くらい前に埋め立てられました。
小さい頃にその海で遊んだ記憶がたくさんあり、実家と海というのは自分の中ですごく密接な関係にあったという感じです。
まだ東京に住んでいた頃、海のない実家に帰っても自分の家じゃない違和感を感じて、小さい頃の記憶を探しに海(広島の海、それ以外も色々な場所で)を撮影していたというものです。
今思えば、前述の「自分の家じゃない感覚」というのが両親の関係性も悪くなっていく時期とも重なっているので、その後のRed Stringにつながる物はあったのかな?と思っています。
というより本当に撮るべきなのは両親との関係性だったのに、海に自己投影してよくわからない作品を作って、かなり回り道してしまった感じというか…
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数年を経て、作品を作っていく中であの「波」の作品がなんとなく撮られていた訳のわからないものではないという事がわかってきた。
作品にしようとして撮影している写真でも「今は使えない」とよく伝えることがある、または、今作ってる作品に過去に撮影したものが活かせないか、あらためて見直すように伝えることがある。今の藤井さんには、この「波」のあらたな解釈をもとにした作品が作れるかもしれないという気がした、そんなやりとりだった。
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「Red String」から次作「Incipient Strangers」を作り、藤井さんが東京を引き上げ地元の広島に帰り、それ以来、広島と戦争を主題に取り上げて作品作りをしているが、最新作が「Hiroshima Graph – Everlasting Flow」、お祖母様の被爆体験を基本に作られた作品。藤井さんが丁寧にお祖母様に聞き取りをして作り上げた本である。
完成したその本をお祖母様に見せることが出来た、そのときの様子を記事にしてくれたので次にご紹介したい。
RPS後藤由美