鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑧ エディション87の意味
Reminders Photography Stronghold Gallery、2017年度の企画展第一弾には鈴木麻弓写真展『The Restoration will』を開催いたします。鈴木麻弓は2016年度にRPSにて開催されたPhotobook As Objectワークショップで写真集プロジェクト『The Restoration will』に取り組みました。今回は東日本大震災から6年を経て、鈴木が写真家としてたどり着いた手製本の刊行およびその世界観をご覧頂く写真展になります。展示に先がけ、展示作家鈴木麻弓によるエッセイの連載を開始いたします。第八回目は「エディション87の意味」です.
鈴木麻弓写真展「THE RESTORATION WILL」
日時:2017年3月4日(土)~2017年3月26日 (日)(※13:00~19:00、会期中無休、入場無料 )
◎◎オープニングレセプション、およびアーティストトーク:2017年3月11日(土)午後6時から
開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
こちらの写真展は ご好評のうち上記日程を以って終了いたしました。
エディション87の意味
今回の手製本は、限定87冊となっています。
この数字は佐々木写真館の創業年数を意味しています。祖父・佐々木虎猪が1930年に大崎市から女川町にやってきて写真館を創業しました。そこから数えて今年で87年です。この数字を今回のエディションナンバーとしました。
祖父が開業して3年後の1933年(昭和8年)に昭和三陸津波がありました。どれほどの被害だったのか、実際祖父に尋ねたことがなかったので把握できていませんが、災害を乗り越え商売を再開したことは確かです。その後結婚し5人の息子を育てました。次男である私の父・佐々木厚が21歳で家業を継ぐと、今度はチリ地震津波が町を襲いました。1960年(昭和35年)のことです。海岸近くにあった写真館は1階天井まで浸水。幸い女川町では死者はでなかったものの、町の多くが浸水し被害を受けました。
繰り返し地震と津波が起きる地域で、なぜ人々はこの土地に住み続けるのでしょうか。
我が写真館は私で三代目にあたりますが、この町では代々家業を継いでいる者が多く、こうした津波被害にも負けず再建、復興してきました。個人の歴史の重なりがこの町を造ってきたということになります。写真館の歴史1年1年を、本を購入してくださった87名ひとりひとりに託せたらいいなと思っています。
鈴木麻弓
◎これまでのエッセイを読む
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ① 父のレンズ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ② 青いポートフォリオ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ③ 青い波
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ④ キャンドルを灯す夜
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑤ 家族のスナップ写真
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑥ 石巻の紙
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑦ 地図とスナップ