鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑤ 家族のスナップ写真

Reminders Photography Stronghold Gallery、2017年度の企画展第一弾には鈴木麻弓写真展『The Restoration will』を開催いたします。鈴木麻弓は2016年度にRPSにて開催されたPhotobook As Objectワークショップで写真集プロジェクト『The Restoration will』に取り組みました。今回は東日本大震災から6年を経て、鈴木が写真家としてたどり着いた手製本の刊行およびその世界観をご覧頂く写真展になります。展示に先がけ、展示作家鈴木麻弓によるエッセイの連載を開始いたします。第五回目は「家族のスナップ写真」です.

鈴木麻弓写真展「THE RESTORATION WILL」
日時:2017年3月4日(土)~2017年3月26日 (日)(※13:00~19:00、会期中無休、入場無料 )
◎◎オープニングレセプション、およびアーティストトーク:2017年3月11日(土)午後6時から
開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
更なる詳細はこちらから。

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© 2017 Mayumi Suzuki / The Restoration Will

家族のスナップ写真

手製本「The Restoration Will」のストーリーは、私の幼少期のスナップ写真から始まります。どんな町で、どんな家族だったのか。ページ進んでいくにつれて、スナップが変化し、何かが起こったような、そんな予感をさせる構成になっています。スナップは表面が剥がれ、色を失っています。それらの傷は、私たちが負った傷にも似ています。

これらの写真は、津波の後に人の手によって拾い集められ、ボランティアの手によって洗浄され、持ち主に返されました。家を失い、家族や親戚、友人を失った人たちにとって、生きてきた証を示してくれるものが写真だったのです。スナップは写真家の私にとっても大切なものです。父がずっと撮ってきてくれた写真ですから、白く画像を失っていても、記憶は蘇ってきます。この本を語る上でとても役に立ちました。

正直なところ、私は震災直後にこれらのスナップを受け取ってから(多くは友人が見つけ、私に届けれくれました)、ずっと引き出しに閉まったまま、5年間開くことはありませんでした。津波のことを思い出したくなかったし、両親の顔も思い出したくなかったからです。
「過去(津波が起きて失ったもの/こと)」を忘れたい、その代償として「それ以前の過去(津波が起きるまでの過去)」までも捨てざるを得ない。どうしても振り向けなかったのです。これは私だけかもしれないし、他の被災した人も同じ気持ちなのかもしれません。

この本を作るきっかけになったワークショップで、講師のヤン・ラッセルさん、後藤由美さんがこれらのスナップ写真を織り交ぜていくことを提案してくれ、私のこうした「過去」を受け入れていけるよう、そっと励ましてくれました。こうやって本の内容に深みを持たせる方法に辿り着けたのでした。

鈴木麻弓

次回へ続く

◎これまでのエッセイを読む
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ① 父のレンズ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ② 青いポートフォリオ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ③ 青い波
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ④ キャンドルを灯す夜