鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑥ 石巻の紙

Reminders Photography Stronghold Gallery、2017年度の企画展第一弾には鈴木麻弓写真展『The Restoration will』を開催いたします。鈴木麻弓は2016年度にRPSにて開催されたPhotobook As Objectワークショップで写真集プロジェクト『The Restoration will』に取り組みました。今回は東日本大震災から6年を経て、鈴木が写真家としてたどり着いた手製本の刊行およびその世界観をご覧頂く写真展になります。展示に先がけ、展示作家鈴木麻弓によるエッセイの連載を開始いたします。第六回目は「石巻の紙」です.

鈴木麻弓写真展「THE RESTORATION WILL」
日時:2017年3月4日(土)~2017年3月26日 (日)(※13:00~19:00、会期中無休、入場無料 )
◎◎オープニングレセプション、およびアーティストトーク:2017年3月11日(土)午後6時から
開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
こちらの写真展は ご好評のうち上記日程を以って終了いたしました。

 2017 Mayumi Suzuki / The Restoration Will

2017 Mayumi Suzuki / The Restoration Will

石巻の紙

手作りで本をつくるメリットは、自分で紙を選んだり、好きなレイアウトや好みの印刷方法を選ぶことができます。紙の手触り、風合いを通して、作品の意図を感触としても伝えることができると私は思っています。海外への送料に関係してくるため、できるだけ軽い紙を選ぶことをお勧めしたいです。

この本を作る上で、10種類ほどの紙を試してきました。インクジェットプリンタを使うために、つるつるとした紙を選ばず、ざらついていて、だけど高級感もあるような手触りを求めていました。試した結果最後に出会ったのは、日本製紙石巻工場で震災後に開発され、復興応援商品として売られているモンテシオンMONTESIONという紙でした。私の作品の特徴である砂っぽいざらつきが表現でき、インクジェットの黒の濃さが抜群でした。なにしろ私の故郷の隣町で作っていて、家族で仙台へ出かけるときには必ず、その製紙工場の横を走った、そんな思い出の工場です。

隣町で作られた紙で、女川町の物語を紡いでいく。本をめくりながら、そんなことを思っていただけたら嬉しいです。

鈴木麻弓

次回へ続く

◎これまでのエッセイを読む
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ① 父のレンズ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ② 青いポートフォリオ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ③ 青い波
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ④ キャンドルを灯す夜
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ⑤ 家族のスナップ写真