木村肇 アーティストブック「scrap book」ご注文受付終了
ご好評につき、木村肇 アーティストブック「scrap book」ご注文受付を終了いたしました。
ご注文いただいた皆様、ありがとうございました。写真集到着まで今しばらくお待ちください。
本の物語は、作者である木村が、2007年から2014年までに、主に新潟の山村で人々の生活を撮りためた写真と、手書きのイラストを中心に構成されています。それらを印刷した後に、ひとつひとつを鋏で切り抜き、ノートのページに貼ってゆくという作業を経て、完成しました。
完成したダミーは2014年度、ドイツのダミーブックアワード「Kassel Dummy Award」にてダミー賞3位を受賞し、ドイツの出版社Verlag Kettlerより普及版が刊行されました。
手探りであつめられた紙片が、作家の手によってまとめあげられたダミーの作品としての関心も高く、この度、2014年に出版された同タイトルのダミー版をベースに、数箇所の改定を加え、当時の形を忠実に再現。
アーティストブックとして39部が作家の手によって製作されることになりました。
透明な山がするすると崩れてゆくと、床に落ちたネガティブはパサッと音をたてて消えていった。
僕はそれらをおもむろに両手で拾い上げると、もとの位置にどさっと置いた。部屋を出ようとドアをあける。外の光が入ってくる。隙間から光の線がネガの山をぼんやりと照らす。部屋を出る。僕はドアを閉めようとする。くらい部屋の奥で、うず高く積まれたネガ。時間の堆積を明るい隙間から眺めた。
ふと、スリーブの右下にマジックで記された手書きの番号が目に入った。
僕はドアを閉める。
2014年8月。僕は新潟のとある山村での記録を反芻していた。
みーんみーんと蝉の鳴き声が網戸越しに耳を通過してはすぐさま入り込んでくる。
汗ばんで湿った指先でネガを1列、引き抜いた。入道雲がネガの向こう側に見える。定着不足なのかネガは薄紫色に変化していた。ネガを左右に動かす。濃緑の林を向こう側に、ネガは一瞬だけポジティブに変わった。
7年という時間の経過の上澄み程度しか撮られていないイメージ群。それでもネガを透かして眺めていると、当時の記憶が噴水のように湧いては脳内を駆け巡った。
東京の郊外、関東平野。千葉県の生家。プラモデルような住宅群、灰色のアスファルトでコーティングされた地面。その上を、するすると滑るように移動する自動車が遠くに見える。僕はネガをスリーブに戻した。
時間を横滑りしながら、僕は7年間の記録の上澄みを掬い取ろうとしていた。
川が岩に当たる音、木々が風に擦れ合った直後に身体に纏わりつく匂い。足の親指が土の地面を掴む感触。
スリーブに入ったネガを眺めながら尚、遠くの、同じ時間軸上に存在している彼らの事を考えていた。
木村肇
木村肇 アーティストブック「scrap book」
◎ページ数 : 146ページ
◎サイズ : 132 x 218 x 18 mm
◎写真:158点
◎イラスト:19点
◎出版年:2021年
◎制作限定数:39部(全エディション署名入り)
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◎価格:9,900円(消費税込、別途送料についてはこちらをご確認下さい)
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