実験的ワークショップアトラスラボに向けて「イメージの再構築と比喩的表現」についての考察(文・木村肇)

2022年2月に開催、現在参加者募集中の 実験的ワークショップアトラスラボ「イメージの再構築と比喩的表現」参加申し込み受付中【1/16 応募締め切り】について、今回のワークショップのテーマである「イメージの再構築と比喩的表現」とはいったいどのような解釈のことを言うのか。その思考の補助となるべく、講師である写真家の木村肇さんが自身の作品、写真集「Snowflakes Dog Man」「Mišo Bukumirović」の中から写真を選び、その写真の解釈を言葉にしてくださいました。

例1
比喩的表現+再構築

Snowflakes Dog Manより

©︎Hajime Kimura

千葉県稲毛海岸。

亡くなった父親の足跡を辿る中で、過去の家族アルバムから父が幼少期に訪れていた場所を再訪する。残された者が「死」をどう消化していくのかを自分なりに観察してみようと思った。他者の記憶の追体験や憑依のようなイメージが作れるのかを模索していた。左右にイメージを分割する意味は、時間の経過や人間の左右からの視覚や視野、視線の動き等に似せたいという意図があったため。他人の記憶を勝手に解釈し創り上げた、という言い方も出来ると思う。

例2

写真集「Mišo Bukumirović」より

比喩的表現+再構築的表現

同じ場所の過去と現在。1991年と2017年、スタディオン・マクシミル(クロアチア)

この作品では以前から考えていた、記憶の連想性やそこから派生して他者と自分の記憶がどこかで繋がることは可能なのか、という「記憶を介した関係性」のようなものを描いている。

過去の記憶に残っている、ある男性をプロファイリングする中で、自分の記憶に近いイメージとその男に関して残された映像群の断片を繋げる作業を行った。ある種のバーチャル世界での記憶の繋がりをアナログに体現しているという点では、SNSにも似ている比喩的な表現とも捉えることができると思う。また、文字通り記憶の再現という意味では再構築的表現という捉え方もできるかと思う。

同じ時間と違う場所。1991年5月、日本と旧ユーゴスラビア・ザグレブ

同じ時間と違う場所。旧国立競技場とスタディオン・マクシミル(クロアチア)

同じ場所の過去と現在。1993年と2017年、旧ユーゴスラビア・ブコヴァル

同じ場所の過去と現在。1993年と2017年、旧ユーゴスラビア・ブコヴァル

同じ時間と違う場所。1993年、日本と旧ユーゴスラビア・サラエボ

同じ時間と違う場所。1993年、日本と旧ユーゴスラビア・サラエボ

2016年にアーティストブックとして刊行した「Snowflakes Dog Man」。世界中で本書のファンを抱えながら、先日はVirtual Bookshelfで知られるヨーゼフ・クラデック氏より、『時代を超えて優れた1冊』と紹介されるなど、高い評価を受け続けています。

2019年にはイタリアの出版社CEIBA editionsより普及版として出版されており、RPSでは印刷時に出力された刷り出しを特典として、お取り扱いを行っております。

また2020年に販売を開始した「Mišo Bukumirović」。《記憶》をテーマに作品制作をしてきた木村さんの最新作です。本作は続編が現在進行形で制作が進められており、新たな展開を皆様にご覧いただける機会ができることと思います。ぜひご期待ください。
写真集「Mišo Bukumirović」の詳細はこちらから

作品の厚みの中にさまざまな表現がある中で本ワークショップが焦点を当てたのは「イメージの再構築と比喩的表現」。その解釈の答えは一つではなく幅の広い観点からディスカッションを重ねることで、作品が何を語ろうとしているのかを探り、作家自身が作品の理解を深めます。
どんな作品と出会うことができるのか講師一同楽しみにしております。

作品の持つ実力とともに、その作品、写真が語ろうとしていることを作家自身が深く理解し、言語化できること。作品が育つ上で重要とされるその構造の基盤を木村さんは築き上げてきました。
ワークショップの中では講師陣(木村肇、後藤由美)とともに、参加者自身の写真とそれが語ろうとしていることについて向き合う作業が重ねられていきます。ワークショップの締め切りは2022年1月16日(日)まで。作品を発展したいと願っている皆様のご参加お待ちしております。
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