木村肇アーティストブック「Mišo Bukumirović（ミシャ・ブクミロヴィッチ）」販売中

04/30/2020

只今より木村肇アーティストブック「Mišo Bukumirović」の販売を開始いたします。

作者木村肇が、サッカーを始めた頃の記憶に残っていた「あの男性」に会いに行こうと取り組むことになったプロジェクト、その核心へ繋がるプロローグとしてまとめられたのがこの1冊だ。作者にとっての「偶像」はどのように脳裏に残っていったのか。その後の未来に、実際に「あの男性」と対面する日が来ようとは思いもしなかっただろう、8歳当時の彼自身、彼の記憶と動機がテレビの画像の「あの男性」、すなわち「Mišo Bukumirović」と交錯する。

そして、時を経て海外で作家活動をすることになった木村に餞別として2015年の11月に1冊の無地のノートが贈られた。そこには「あの男性」に会うまでの日々、旅と旅の間に収集された情報がなぐり書きで埋められていった。それがたたき台となって1冊に編み直されたのがこの本である。

「Mišo Bukumirović」

この物語は自分がフットボール（サッカー）を始めた時の記憶や接点を遡り、当時の自分の記憶の底に澱んでいた、とある人物を思い出していく過程を記したものです。台所の冷蔵庫。その上に乗っかっていた黒い14型のブラウン管のテレビ。僕はそれを眺めていました。

1990年、日本にはその後に誕生するJリーグの存在は未だありませんでした。しかしながら世の中の潮流が徐々にサッカーに傾きかけていたのを覚えています。
自分も「はやり」に乗る形でサッカーを始めました。その頃からテレビ番組で海外のサッカーニュースやサッカーアニメを時々ですが、見ていた記憶があります。

自分は当時8歳でした。

記憶の断片の中で自分がいまでも覚えている試合があります。それは偶然にもある同じサッカーチームが出場していた試合でした。その試合は1990年5月13日にクロアチアのザグレブで行われた、ディナモザグレブとレッドスター・ベオグラードの試合、もう一つは1991年12月8日の東京で行われた、レッドスター・ベオグラードとコロコロ（チリ）のインターコンチネンタルカップ（後のトヨタカップ）の試合です。自分が当時の断片を今でも覚えている理由は正確には分かりませんが、一つ目の試合は自分たちがよく知るサッカーのそれではなく、「暴動」であったこと、二つ目の試合は自分がその試合を国立競技場まで見に行こうとした記憶があるからだと思います。（結局行けず、テレビで見ていました）とくに二つ目の試合では記憶に残っている場面がいくつかある中で、とある一人の男性の姿がブラウン管を通した残像として時より蘇ります。

その男性は選手でもサポーターでもなく、レッドスターベオグラードのマッサージストの方でした。

なぜその人が気になったのか。当時の試合のVTRは監督や選手が映されている横で、その男性がフレームに入ってくる場面がありました。試合中、ケガ人が出た時にはテレビはずっとその人をワンカットで映していました。試合後の優勝パレードでは、選手の真横で一緒にトラックを歩いていました。そしてその男性は唯一、緑色の上着を着ていました。

自分は中学生になっても相変わらずサッカーを続けていました。Jリーグではユーゴスラビア出身のサッカー選手が活躍していました。有名な欧州のチームを舞台に活躍していた彼らが、なぜキャリア半ばで日本に来ることになったのか、当時は知る由もありませんでした。

1998年、自分は当時高校２年生でした。サッカーを続けていました。

日本のナショナルチームはフランスワールドカップに初出場しました。

1999年、NATOがどこかの国を空爆した、というニュースを何かで知りました。

2016年、自分はサッカーを始めた時に記憶に残っていた「あの男性」に会いに行こうと思いました。

この物語は自分がフットボール（サッカー）を始めたときの記憶や接点を遡り、当時の自分の記憶の底に澱んでいた、とある人物を思い出していく過程を記したものです。そしてその人物に実際に出会う前の、僕の頭の中で起こっていた空想のお話です。

木村肇（写真家）

©︎Hajime Kimura / Mišo Bukumirović

木村肇アーティストブック「Mišo Bukumirović」
◎ページ数 : 524ページ
◎サイズ : 200 x 138 x 50 mm
◎制作限定数：91部（全エディション署名入り）

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※現在、木村肇の「SNOWFLAKES DOG MAN」も絶賛取り扱い中です。あわせてご検討ください。
※2020年6月13日より最新作「青い鳥のとまり木」にて写真展の開催を予定しております。
Facebook等で詳細を更新しておりますので、こちらもぜひご期待ください。

木村肇写真集「Mišo Bukumirović」のページ見開きより：