ジャスティン・マクソン写真展「Front Page, Above the Fold」

2014年度最後は第6回RPSグラント受賞写真家のジャスティン・マクソンを迎え、写真展を開催いたします。
写真家が自らアメリカでプリントし持参した大判プリントにはとても複雑なコンセプトがあります。尚、12/12には午後5時頃〜オープニングレセプション、その後はアーティストトークを予定しております。今回の展示も是非、写真家のお話しをじかに聞いて頂きたいと思っています。質問大歓迎です。寒くなりましたが、みなさまのお越しをお待ちしています。
Above the fold 007
「Front Page, Above the Fold」は、ペンシルヴァニア州チェスターに広く存在する黒人のアイデンティティのプレゼンテーション/リプレゼンテーションを調査し、組み立て/分解し、2つの異なるアーティスティックな形へと構成/再構成するという、参加型アクション調査プロジェクトである。

会期:12/12-12/28まで
午後1時から7時まで(会期中は無休、図書室のご利用時間も同様になります)
オープニング:
12月12日(金)午後5時から/参加費無料
*アーティストトークは午後6時ごろから
会場:Reminders Photography Strongholdギャラリー
FBでのイベントページはこちら。
https://www.facebook.com/events/752619648119822/

※写真展期間中にはワークショップ開催されます。
Above the fold 001
Above the fold 008
コンテクスト
2008年7月8日。フィラデルフィア・メトロ紙のフロントページ、「チェスターでの火事で2名を助けようとした救出者が死亡」という痛ましいヘッドラインの下、折り目の上に掲載されたのは、間に合わせの慰霊碑となってしまった家族の家の前に立ち尽くす一人の黒人女性のイメージだった。

我々のメディアの中心で、この貴重な財産は、私達の文化的信仰と偏見の生産と消費に場を与える。社会学者のマニュエル・カステルズはこの現象を「マインドフレーミングによるパワーメイキング」(我々のアイデンティティの提示/表現および創作/複製における古来の伝統)と呼ぶ。しかし、通常はこの駆け引き、および我々が知覚し、判断し、生きるリアリティを根本的に変化させるその能力に我々は気づかない。つまり、我々はこの写真の中の女性をベタ・レーン、自分たちをフォトグラファー、この記事を自分たちの記事として認識することはない。

ヘッドラインを考察する:
「・・・チェスター銃撃事件で男性1人が死亡;涙の辛苦:国中で銃についての議論がなされるが、チェスター在住の母親の痛みは癒えず;武器が発砲:チェスターで拳銃とマリファナを押収、市内でさらに2名が銃撃被害に;銃弾の雨:チェスターで8件の銃撃事件、1名死亡、数名負傷;チェスター銃撃事件で男性1名重症; 警官の暴力的対決が映像に捉えられる;チェスター・ハイスクールそばで銃撃事件・・・」

コンセプト
「Front Page, Above the Fold」は、ペンシルヴァニア州チェスターに広く存在する黒人のアイデンティティのプレゼンテーション/リプレゼンテーションを調査し、組み立て/分解し、2つの異なるアーティスティックな形へと構成/再構成するという、参加型アクション調査プロジェクトである。

1
地元紙、ソーシャル・ネットワーク、コミュニティ内での過去7年間の労働から大量に集められた私自身のアーカイブなど、様々なメディア経路から集められたイメージを使い、私はチェスターでの報道によって受け継がれてきた人種のステレオタイプのコラージュのシリーズを制作した。そして、それぞれの分類別の描写に基づいた解釈を構成した。

ステレオタイプ
チェスターでは命の価値が低い;若い黒人男性には暴力の能力しかなく、黒人女性は傷ついている;黒人たちは誰かが殺された後のみ盛り上がれる;チェスターの黒人たちは彼ら自身の環境を形作るには無力である。
2
同様に、私は自身のアーカイブから、例えばベタ・レーンなどのようなイメージ、ネガディブな連想を 、基のイメージの断片のみが在り、認識できない状態へと解体するようなイメージを掬いあげた。精神分析学的なシンボリズムを借りれば、観るものに予め定められた描写に基づく判断をするのに必要な情報が与えられない場合、観るもの同士の間では率直な対話がなされる。そのため、観るものたちは黒人の描写に基づいた、彼らの偏った認識に頼らざるを得ないことになる。

プロセス
処理/再処理されたイメージを、太陽光で露光したフォトグラヴュア・プレートに焼付けた後、私はそれぞれのプレートにカラーインクで手塗りし、水彩画用紙に手動プレス機でプリントする。一つとして同じプリントはない。

新しい描写を再構築するため、異なる所から断片を取り出し、そしてそれらの断片を組み立てる/分解することは欠かせない。これは疑わしいハイパーリアリティとして解釈することもできる。フォトグラヴュアの技術は、パーツを接着させている糊を取り去り、イメージをさらに解りやすいものとして構築/再構築する。私がステップ1でコラージュのプレートを彩色する目的は、祝福されたパノラマに歴史的に関連する絵のクオリティーを思わせるようなイメージを作成することにより、深く刻まれたネガティブな連想の解釈/再解釈へと導く事にある。

インパクト
それぞれのコラージュに刻まれた物語は、人にステレオタイプを超えた視点を持てるよう潜在的な信念と偏見に批判的に向き合うこと、また、現在の状況の複雑さ(差異と共通点)についての熟考を促す。

翻訳:奥山美由紀

10255608_512951715473167_771681998704604908_n講師ジャスティン・マクソンプロフィール:
ジャスティン・マクソン(1983年)はカリフォルニア北部の森の中の小さな街で生まれた。アーティストであり、ドキュメンタリー写真家。矛盾した争いや人道的な問題などの長期のプロジェクトを続け、芸術的な表現や新しい形を取り入れて発表している。

これまでの受賞歴は、世界報道写真賞、ユニセフ・イメージ・オブ・ザ・イヤー 、POYi、2008年Lucie Awards (年間最優秀賞)、PDNの最も期待される30人の写真家、世界報道写真財団のJoop Swart Masterclassに選出、2011年NPPAの “New America Award ” 、2012年Flash Forward Emerging Photographers を受賞。財団からはMagnum Foundation Emergency Fund、FotoVisura, The Alexia Foundation for World Peace, The Aaron Siskind Foundationなどから支援を受けている。

主な展覧会などは、The Musuem de Arte Acarigua – Araure inVenezeula , OneArts Space in New York , Second Floor Gallery in London , 25CPW Gallery in New York , the Bermuda National Gallery , the Rayko Gallery in San Francisco , Photoville Festival in New York , the Project Room in Chicago , the Exposure Gallery in San Francisco , the Singapore International Photography Festival , the LOOK3 Festival inCharlottesville , the Chobi Mela Festival in Bangladesh , the Lodz Fotofestiwal in Poland, the New York Photo Festival in Dumbo , and the Fotopub Festival in Slovenia、the LookBetween Festival in Charlottesville , the AnkorPhoto festival in Cambodia , and the Photography Days in Istanbul , and the Bursa Photo Festival in Turkey