鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ④ キャンドルを灯す夜
Reminders Photography Stronghold Gallery、2017年度の企画展第一弾には鈴木麻弓写真展『The Restoration will』を開催いたします。鈴木麻弓は2016年度にRPSにて開催されたPhotobook As Objectワークショップで写真集プロジェクト『The Restoration will』に取り組みました。今回は東日本大震災から6年を経て、鈴木が写真家としてたどり着いた手製本の刊行およびその世界観をご覧頂く写真展になります。展示に先がけ、展示作家鈴木麻弓によるエッセイの連載を開始いたします。第四回目は「キャンドルを灯す夜」です.
鈴木麻弓写真展「THE RESTORATION WILL」
日時:2017年3月4日(土)~2017年3月26日 (日)(※13:00~19:00、会期中無休、入場無料 )
◎◎オープニングレセプション、およびアーティストトーク:2017年3月11日(土)午後6時から
開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
更なる詳細はこちらから。
キャンドルを灯す夜
私たちにとって3月11日は東日本大震災が起こったという重要な日です。被災者、生存者、家族を失った人にとっては、どのように3/11を過ごすのか悩ましい日でもあります。ある人はお墓や記念碑にお参りに行くでしょうし、独りで静かに過ごしたいという人もいます。被災者の多くの人はテレビを見たくないといいます(なぜなら3.11の特番を見て津波を思い出したり、トラウマになってしまう人もいるからです)。
昨年はちょうど5年でしたので、3月11日に叔父、両親の友達、近所の人たちに写真館跡地に集まってもらいました。両親がいた頃は写真館にはいつも人が集まり、コーヒーを囲んで会話が弾んでいましたので、それを再現してみたいと思ったからです。彼らは母の煎れるコーヒーが大好きでした。彼らから聞く両親の話が懐かしく、コーヒーのように私の心を温めてくれました。
夕方4時に私たちは撮影準備を始めました。撮影するにはまだ少し明るすぎたので(父のレンズはシャッターが壊れていて夜しか撮れないので)、日が落ちるのを待っていました。始めの20分はキャンドルを持って準備していましたが、気温2℃の中で、風が強く吹いたりしていて、だんだん冷えてきました。「ああ、あの日を思い出すなぁ。まさに今日は3.11だな」と誰かが言うと、「ほんとよね。あの日も地震の後に雪が降ったのを覚えてるわ。私たちは助かったけど、なんで逃げなかったのかなー」と誰かが言いました。
そんな会話があり、私が撮影を終える頃には、みんな泣きそうになっていました。私たちはこの撮影を通して痛みや悲しみを共有しているのかもしれません。完成した写真はキャンドルが「希望の光」のように見えますが、それと同時に亡くなった人たちの魂が帰って来たような効果を生み出しています。
鈴木麻弓
◎これまでのエッセイを読む
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ① 父のレンズ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ② 青いポートフォリオ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ③ 青い波