【緊急企画展COVID-19パンデミック公募ファイナリスト決定】杉浦 修治「dissociation」、松下 律子「空を仰ぎ、彼らを見送る」、魏子涵「呼吸の響き」
2020年8月15日で応募を締め切った公募【緊急企画展公募】REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD / COVID-19パンデミック写真展企画につきまして最優秀賞者1名とファイナリスト3名が選出されました。
最優秀賞作品は王露さんの「いまここ、いまあそこ」です。王露さんは2020年9月12日から22日の期間、RPSのスペースを使用して個展を開催いたします。
またファイナリスト3名の作品は杉浦 修治さんの「dissociation」、松下 律子さんの「空を仰ぎ、彼らを見送る」、魏子涵さんの「呼吸の響き」です。
ファイナリスト3名につきましては2020年10月17日から25日の期間グループ展を開催いたします。
ぜひご期待ください。本ページではファイナリストの作品をご紹介いたします。下記をご覧ください。
◎ファイナリスト | 杉浦 修治さん「dissociation」
作品ステイトメント | 「dissociation」
2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、日本政府は緊急事態宣言を発令した。
youtubeにはコロナ関連の動画が溢れ、コメント欄からは人々の混乱が見て取れた。様々なヘイトや、コメント同士のいがみ合い、根拠のない情報の蔓延。しかし一歩外に出れば、そこにはいつにも増して静かな街の姿があった。外にはヘイトを叫ぶ者も、いがみ合っている者もいない。皆穏やかに散歩をしている。現実とインターネット上での人々の感情の落差に違和感を覚えた。
人間は普段理性によって抑圧されているが、インターネットというバーチャルな空間において、その力は急速に弱まる。インターネット上にはもう一つの身体(ここでは仮に電脳体と呼ぶ)が存在している。そして電脳体は、現実の身体とは異なる理性のもとに行動を行う。
インターネットの登場による人間の身体の解離は興味深いが、他方で不気味なものでもある。そしてこの現象は、インターネットをやめて現実と向き合えば解決できる、というタイプの単純な問題ではない。電脳体はすでに私たちの身体の、そして社会の重要なファクターになっている。
プロフィール | 杉浦 修治
1992年、千葉県市川市生まれ。2016年より東京を拠点に写真作家として活動を始める。 写真を詩的な表現に用いる文脈よりも、写真をある種のシステムとして、ソリッドな表現に利用する文脈の方に共感を覚える。私の場合は主に、写真を重ねること、もしくは大量に並べることによって、写真(もしくは写真という総合的な行為)それ自体の脱構築を試みる。これまでは写真と社会問題を直接繋げることを避けてきたが、今回の件は自身も当事者であるという意識が強くあり、大きな違和感を覚えたため、自らの表現方法と重ね合わせることを試みた。
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◎ファイナリスト | 松下 律子さん「空を仰ぎ、彼らを見送る」
作品ステイトメント | 「空を仰ぎ、彼らを見送る」
「風邪と同じだし。治るし。」という人は多くいる。
しかし、そうではない人もいる。
全世界での1日の死者数、自殺者、他の病気による死者数と比較して、「大した数値じゃない。」という人もいる。
しかし、今年のはじめまでは誰も気に留めていなかった未知のウィルスによって、治療法や治療薬がなく、近しい人にそばにいてもらえることもなく死んでくというのは、どんなにか心細く、悲しく、悔しいことかと思う。
数字で見ると数字でしかない。ひとつひとつの命に名前があって、家族があり、生活があることを想像してほしい。軽率な行動は取れなくなるはずだ。
旅行会社に勤める私は、出勤が停止された。そのため毎日コンパクトカメラだけを持って近所を散歩する。そして、空を見上げて撮影をする。今日、COVID- 19によって空へ、宇宙へ還っていく命を思いながら。帰宅したら撮影した空の写真を印刷し、その空に命をひとつひとつ、写経をするように描く。
プロフィール | 松下 律子
神奈川県横浜市生まれ。神奈川県横浜市在住。 小さな旅行会社で働きながら写真アーティストとして活動しています。 子どもの頃、世界は極彩色。光も闇も濃厚。周囲には妖精や妖怪が動き回り、目に見えない大きな力の存在を感じていました。そして毎日が発見、驚愕、喜び、哀しみ、愛、裏切りの連続。疲労困憊の日々でした。たぶん少し変わっていたと思います。そんな子供の頃に読んだ絵本やファンタジーの世界、そして大人になってから出会った東洋思想の一つである「禅」の考え方に影響されています。 「すべての物質には実体がなく、流動的な状態のほんの一時の姿であり、常に変化していく」 私はその考えから逃れることができません。 「それ」はいつから「それ」でありいつまで「それ」であり続けるのか? 私はそんな疑問を表現したく作品を制作しています。
HP : https://www.maturi-co.maturyu.com/
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◎ファイナリスト | 魏子涵さん「呼吸の響き」
作品ステイトメント | 「呼吸の響き」
風が吹いた時、そよ風が私の顔を吹きすぎる、それ私の呼吸だった。 私の呼吸音は壁に囲まれていた。 この壁はーー 全ては動物園や水族館で撮った写真だ、動物を見るというより、自分の憶断を 見るということだ。番号や言葉と写真を組み合わせることによって、博物館で收 集したもののように見えてくる。人にとって、世界はデータバンクとして感情の 需要を満たすために存在する。 コロナのせいで、人類と周りの世界という不平等な関係を拡大される、密閉し た容器に生きてるのようでいて、動きや呼吸することが難しくなった。 人類が生きるために、まず必要としたものは生きる場所だった。ただし、自ら のいきる領域の範囲がだんだん狭まってきたように思う。壁に向かって感情、表 情、言葉、さらに⻝欲を投げると、自分の呼吸音が頭に響いてしまう。もしこう いう状況を続けていくと、何が必要なのか?何がいらないなのか?
プロフィール | 魏子涵(ギシカン)
1994年、中国に生まれ。武蔵野美術大学大学院,写真コース卒業。
卒業後東京を拠点に写真家として活動を始める。
作品は主に人と人の距離、人と異空間との繋がり方、
動物は近年の作品に頻繁に使われるモチーフのひとつだ。
[国内外のギャラリー、美術館で展示経歴]
2019年:第21回写真
website: www.xibaow.com