10×10 American Photobooks – 写真集との最近の関わりから選出した10冊

final10x10_american_logo-flat-1_webRPS後藤由美です。今回10×10 American Photobooksのオンラインセレクターとして参加させて頂きました。RPSも後藤由美も何者かわからない方も多かろうと思いますので、最後にRPSの写真集との最近の関わりや取り組みについて、少しご紹介しながら私の10セレクト発表させて頂きます。

今回頂いた10セレクトの選出条件はこちらでした。

1. 1987 年以降に出版された写真集であること。
2. アメリカ人の写真家の写真集(アメリカ生まれ、もしくは長期においてアメリカに暮らしていること)
であること。
3. 上記 2 点を満たしていれば、写真集が印刷、出版された国は問いません。
4. 他のセレクターとの候補の重複は無し。候補をあげていただいた中で前述の候補がある場合は後ほど別
候補をお伺いいたします。
5.写真集の入手可否は問いません。(現在販売しているものにとらわれなくても OK)
6.セレクトにあたり、写真集の現物をお持ちでなくても構いません。

重複、アメリカの写真家でなかったことから、再選したものもありますが、概ね、自分が個人的にリサーチを続けているテーマが共通している写真家の本を選びました。
とくに被写体とのかかわりが極度に深いと感じた写真集。写真家と被写体の間の距離が近く、それゆえに被写体をより深く理解することを可能にし、それが写真家の仕事、作品に表れていると思われるもの。また、写真家のイメージが被写体の気持ち、あり方と完璧に調和している。写真家と被写体のそれぞれの思いや、あり方が写真という形になって具現化している。この作品が写真家と被写体の間で完結し、それ以上どこに行く必要もないだろうという気さえするが、そのような関係性のなかで存在するに留まらず、本という形となって公共の領域へともたらされ、人びとの共感を得ている。
そして、こちらが私の10セレクトになります。

1. Marc Asnin. Uncle Charlie. (Rome: Contrasto, 2012).
001
2. Richard Avedon, Murals and Portraits. (New York: Gagosian Gallery and Harry N. Abrams, 2012).
002
3. Mike Brodie. A Period of Juvenile Prosperity. (Santa Fe: Twin Palms, 2013).
011
4. Donna Ferrato. Living with the Enemy. (New York: Aperture, 1991).
004

5. Arlene Gottfried. Sometimes Overwhelming. (New York: powerHouse Books, 2008).
003
6. Emmet Gowin. Photographs. (Göttingen: Steidl, 2009).
006

7. Steve Hart. A Bronx Family Album: The Impact of AIDS. (Zürich: Scalo, 1997).※現在捜索中。今の所、画像なし

8. Joshua Lutz. Hesitating Beauty. (Amsterdam: Schilt Publishing, 2012).
005

9. Eugene Richards. Cocaine True, Cocaine Blue. (New York: Aperture, 1994).※画像なし

10.Doug Rickard. A New American Picture. (New York: Aperture, 2012).
007
以上です。

写真集にはことさら思い入れが深く、2012年に東京に拠点Reminders Photography Stronghold (RPS) を構えて以来、これまで所在の定まらないままではなかなか買い進む気がしなかった本を、その反動もあって買いあさっています。
009RPSギャラリーに併設する写真集図書室には、そうして集められている本のみならず、世界中から本を出したので寄贈したいという写真家から届いた本などを所蔵。図書室を開放し、何時間でも図書室にある本を自由に閲覧して頂くことが出来ます。その際、お志500円をお願いしています。その500円を積み立てて、みなさんからのウィッシュリストから、優先して本を入荷してくという試みもしています。

◉REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD図書室へは随時写真集が入荷しています。アルバムには所蔵している本を全部アップしきれてはいませんが、こちら

今回、この10セレクトをするにあたり、先述した自分の選考理由を基準に、この図書室にすでに所蔵しているもの、まだ所蔵はされていないが、この10セレクトには外せないと思われたものを選んでいます。また、RPSでは「写真家と写真集をレビューする日」を不定期で開催、写真集を出したばかりの写真家を招き、写真家自身とともに写真集をレビューしていくという試みもしています。リストにある①Marc Asninと⑧Joshua Lutzはその写真家です。この「レビューする日」では毎回写真家に共通する5つの質問をしていますが、最後の質問に「自分の家が火事になってしまい、そこから1冊だけ写真集を持って行けるとしたら、どの写真集を持って行くか?」というものがあります。例えば⑥のEmmet Gowinについては⑧のJoshua Lutzが選んだ1冊だったりします。
写真家と写真集をレビューする日これまでに開催された様子などはFBページのアルバムで是非ご覧下さい。
◉「写真家と写真集をレビューする日」アーカイブ
第七回:安世鴻
第六回:ジョシュア・ルッツ」
第五回:ディビッド・チャンセラー
第四回:ジェレミー・スティグテー
第三回:マーク・アスニン
第二回: ヴォルフガング・ベルウィンケル
第一回: レナ・エフェンディ

本というのは自分が尊敬する、あるいは信頼する写真家からの口コミで入手する場合も多いです。本がどのように写真家の彼、彼女らに影響を与えているのかを探るきっかけになったりもします。そして、それが自分にとっても大切な1冊になることも多い。写真家がもっとも自分の作品を形にしたい本とは?という事にも興味があるため、火事になったら持ち出す本に「やっぱり、自分の本だ」と自信に満ちた答えをもらう時には安心します。その一冊にどれくらい写真家自身が関わったのか、思いを形に繋げられたのかということの裏付けでもありますから。話は戻りますが、RPSでは写真家がもっとも自分の作品を形にしたい本とは?その模索を手作りで実践してみるためのワークショップにも力を入れています。
「手作り写真集はダイヤの原石」ワークショップ(春)+3日間ワークショップ(夏)
Handmade Photobook Workshop at OBSCURA PHOTO FESTIVAL in Penang

また一つの作品としての本ではなく、広く配布することを目的としたニュースプリントメディアにも注目し、今回の10×10カタログ制作などでも大活躍のニューヨークのbookdummypressと今年ニュースプリント賞を創設、出版についても少しずつ働きかけをしています。第一回目の受賞者が決まり、今は9月のニュースプリント刊行、写真展に向けて準備をしているところです。今後の動きなど是非FBページでチェックしてみてください。

長くなりましたが、今回セレクトした写真集に関心を寄せて下さった方々、RPSの写真集にたいする取り組みに興味を持たれた方、是非一度RPSにも遊びにきて下さい。お待ちしています。

RPSキュレーター
後藤由美

 

 

 

 

 




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