石黒萌子写真展「Notation(s)」6/13 – 6/21
©︎石黒萌子 / Notation(s)
2026年度6月の企画展として、石黒萌子による写真展「Notation(s)」を開催いたします。
石黒はこれまで、日常の風景のなかでふと視線がとどまる瞬間に関心を寄せ、写真を通してその感覚を掬い上げてきました。
見慣れた街角や建築の断片、自然と人工物の境界、整っているはずの構図のなかに、わずかなずれや揺らぎがふと立ち上がることがあります。それは明確な出来事というよりも、言葉にするにはあまりに小さな感覚です。
そうした関心の延長として、2024年には「PHOTOBOOK AS OBJECT」ワークショップに参加し、写真集の制作に取り組みました。
抽象的な感覚を起点に、構成を幾度も組み替えながら試行を重ねるなかで、曖昧だった気配は少しずつ輪郭を帯び、やがてかたちとなって定着していきました。そうした積み重ねが、本展へとつながっています。
本展「Notation(s)」では、その小さな感覚のもとに撮影された写真と、それらを「記譜」というかたちへと展開した試みを通して、風景との関係を探ります。写しとどめることと、整理し、理解しようとすること。その往復のなかで、風景をどのように受け取り、そこからどのような感覚や想像が立ち上がっているのかを、共有しうるかたちで差し出そうとしています。
また本展にあわせ、同名のアーティストブック「Notation(s)」(限定100部)を刊行しております。本作は内容はすべて同一でありながら、100冊それぞれに異なるタイトルが付けられています。各タイトルは本編に収められた100枚の写真のうちの一枚を指し示すものであり、同じ内容をもつ本に対して、100通りの異なる入口が与えられる構成となっています。
写真展、アーティストブック、関連トークイベントについてはSNSを通じて随時お知らせいたします。
ぜひ会場にてご高覧ください。
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ある風景を目にしたとき、それが尽きることのない想像を掻き立てることがある。
この本では、私自身が風景をどのように受け取り、そこからどのような感覚や想像が生まれているのかを、読者と共有しようとしている。
私が日常的に撮影している風景を振り返ると、そこにはいつも、視線や思考がわずかに引き止められる瞬間が含まれていることに気がついた。風景がなめらかに通り過ぎず、知覚のどこかで小さく引っかかる。
それは、風景と私のあいだに生じる、ごく微細な摩擦のようなものだと思っている。
外の世界と内側の感覚が完全には重ならず、わずかなずれや抵抗が生まれる。その感覚こそが、想像を立ち上げるきっかけとなり、風景と向き合うための出発点になっている。
この感覚を言葉だけで説明しようとすると、どうしても特定の状況や意味に引き寄せられてしまい、経験そのものをそのまま含めることが難しいように思える。
それは、この感覚が人それぞれ異なるかたちで立ち現れ、非常に幅のある、抽象的なものだからだろう。そこで私は、この感覚を図形によって記譜する手法を取り入れることにした。
この記譜法は、風景を通して感じた不安定さやおもしろさ、ふと湧き上がる疑問、その背後に潜む気配を、視覚的で具体的なかたちへと置き換える試みである。
誰でも描けるようなシンプルな図形を組み合わせ、それを写真と並べて提示することで、抽象的な感覚を、他者と共有できるかたちへと変換していく。
私がこのような風景ばかりを撮る背景には、一種の逃避があるのではないかと感じている。
そのまま受け止めると疲れてしまう情報に対し、想像を差し込むことで、刺激をやわらげているのではないか。空想することは、私にとって、世界との距離を調整するための行為でもある。
ふと目に入る一つの風景でさえ、私にとっては情報量がやや多く感じられることがある。毎日何気なく通っている道でも、道端の木が切られていたり、誰かの落とし物が残されていたり、新しい物が置かれていたり。
そうした小さな変化が、知覚の表面にわずかな抵抗を生む。そのたびに、私は反射的に想像を働かせ、風景とのあいだに余白をつくっている。
この記譜法は、私が風景から受け取ったものを整理し、理解するための手がかりであり、同時に、この本を手に取った人自身が、風景との関係の中で立ち現れてくる想像や感覚に気づいていくための手がかりにもなり得るのではないだろうか。
文:石黒萌子
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石黒萌子写真展「Notation(s)」
◎会期:2026年6月13日(土)〜 21日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
◎オープニングレセプション & アーティストトーク
2026年6月13日(土)午後2時~
※展示は午後1時よりご覧いただけます。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
プロフィール|石黒萌子
1990年生まれ、宮城県出身。
千葉大学建築学科卒業、東京藝術大学大学院デザイン専攻修了。在学中、ウィーン応用芸術大学にて舞台美術と映像を学ぶ。
建築を学んだ視点とクラシックバレエで培ってきた身体感覚を手がかりに、空間と身体の関係性を主なテーマとして制作。
写真、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど複数のメディアを横断しながら、日常に潜む微細な違和や構造を観察・再構成する試みを続けている。
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)