鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ③ 青い波

Reminders Photography Stronghold Gallery、2017年度の企画展第一弾には鈴木麻弓写真展『The Restoration will』を開催いたします。鈴木麻弓は2016年度にRPSにて開催されたPhotobook As Objectワークショップで写真集プロジェクト『The Restoration will』に取り組みました。今回は東日本大震災から6年を経て、鈴木が写真家としてたどり着いた手製本の刊行およびその世界観をご覧頂く写真展になります。展示に先がけ、展示作家鈴木麻弓によるエッセイの連載を開始いたします。第三回目は「青い波」です.

鈴木麻弓写真展「THE RESTORATION WILL」
日時:2017年3月4日(土)~2017年3月26日 (日)(※13:00~19:00、会期中無休、入場無料 )
◎◎オープニングレセプション、およびアーティストトーク:2017年3月11日(土)午後6時から
開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
更なる詳細はこちらから。

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© 2017 Mayumi Suzuki / The Restoration Will

青い波

本の真ん中に青く光った波のページがあります。これは漁船に乗って伊豆半島沖へ出たとき、夜光虫を撮ったものです。ひどく船酔いをし、真っ暗な中で平衡感覚を失っていたのですが、船の軌道に青く光っている夜光虫を初めて見て、なぜか両親のことを思いました。とても神秘的な光で、今までの人生で見たことなのない眩さでした。

私はこの夜光虫の写真は故郷以外で撮ったので、作品の中に入れることに最初は抵抗がありましたが、結局「海が繋がっている」という考えのもと、写真を入れることに決めました。津波の瓦礫が太平洋のあちこちに流れ着き、遠いところではハワイまで届いていることがあります。私の両親はどこまで流れていったのでしょう。6年が経とうとしていますが、いまだに見つかっていません。死者を星に例えることがありますが、私は青い光が彼らの魂をつないでいるように解釈しています。

この写真を本の中に組み込みたいと思ったのですが、どの位置に差し込むかで、物語が変わってきます。険しい崖の写真の後に挿入すると、彼らが青い波に拐われるれたように読み取ることができる。静かな写真の後に入れると、彼らが青い光に包まれて帰ってきたように見える。どこに入れるか私は悩みましたが、読み手の想像に委ねたいと思い、現在の位置に入れることに決めました。

鈴木麻弓

次回へ続く
◎これまでのエッセイを読む
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ① 父のレンズ
鈴木麻弓エッセイ THE RESTORATION WILL ② 青いポートフォリオ