REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #3 PIECES OF BERLIN 2009-2013
RPS図書室に所蔵されている写真集、いつも「新しいのが入りました!」とか「写真家の方から寄贈されました」とご紹介するのが精一杯でしたが、これから不定期で写真集図書室に集まっている写真集についてのレビューを更新していこうと思います。レビュアーも好みや視点が偏らない様に、数名の写真家、写真専門家がとりあげて行きます。不定期になりますが、今後の更新をお楽しみに!#3は写真家の木村肇君によるレビューとなります。
“PIECES OF BERLIN 2009-2013”
by Florian Fleischauer
この本を読みながら、ひとつ思い出したことがある。それはかつて自分が中国の成都で生活をしていた時の朧げな光景である。自分とは異なった誰か。様々な種族や階層が織り成す地域において目の前を通り過ぎる人々は誰もが異なった時間軸を持ちながらも、それが如実に表側にも滲み出ているようで、見ていて飽きなかった。真っ黒なスクリーンの向こう側に忘れ去られたかと思われた、当時の人々の断片はこの写真集のページをめくる度に何故か少しずつ蘇ってくるのである。同時に都市という、ある地域の集合体について想う。都市はそこに住む人々の写し鏡という言い方は少々大袈裟かも知れないが、そこに人間の暮らしがある以上、彼らは集合体を作り、集合体は彼らを吸収しながら変化を続けてきた。お互いが違う方向を向きながらも、ある種の共通認識や擦り合わせの中で生まれた都市もこの世界には存在する。
東ドイツ時代からずっとベルリンに住み続ける老人。当てもなくニュージーランドから訪れ、住みついている若者。娘と一緒に仕方なく移住してきたベトナムの女性。
こちらを見詰める向こう側の誰かは皆、一様に異なった道を辿りながらその歩を今現在も進めているのである。
都市の雑踏を早足で通り過ぎる時、人々のシルエットからだけでは窺い知るこのできない、入り組んだレイヤーがそこには存在する。それはときに時代や人生という言葉に置き換えられるのかも知れない。
もしもそれらのレイヤーが寄り集まった巨大な集合体を都市と呼ぶ事が出来るのならば、ベルリンもまたかつての時代、そしてこれからやって来る者たちの人生を呑み込みながら、その姿を自身で幾重にも変えて行くのであろう。
木村肇(写真家)
◎reminders photobook review #1 NUOTRAUKOS DOKUMENTAMS / PHOTOGRAPHS FOR DOCUMENTS レビュアー:後藤勝(RPS所長)
◎reminders photobook review #2 ASYLUM OF THE BIRDS レビュアー:幸田大地(写真家)