後藤勝 写真展「悔恨への執念」11/3~30まで
2019年度の企画展第3回は後藤勝写真展「悔恨への執念」を開催いたします。
後藤は2015年と2018年に開催された写真集制作ワークショップ、マスタークラスに参加し本作に取り組みました。5年以上費やされた制作課程で、自身の母に焦点を当てていた物語「SHIKI」が、母越しに自分自身を眺めた自分史となり、本作「悔恨への執念」へと変化しました。展示会期中には写真集の制作も会場にて続けられます。
皆様のご来場、ご高覧をお待ちしております。
悔恨への執念
この物語は、私が幼い頃に家を去った、父の遺品の箱の発見から始まる。
その緑の箱の中には古い写真立てがあった。開けると写真が一枚隠されており、白黒写真の中の幼い子どもがこちらを見ていた。私は期せずして、この写真に対面した。そして、その意味に執着することになる。
父の行方は不明のまま、私は母に育てられ成長をするが高校生活に挫折して中退。母の期待を裏切ったことに罪悪感を感じ、同時に、まだ見ぬ世界に思いを馳せ家族のもとを去った。17歳だった。
数年間各地を転々とし、21歳で日本を出た私は、中南米を放浪後、南米コロンビア北部の都市で人権擁護団体の記録係として働くことになった。遺体や遺品など、証拠として写真を撮影し、行方不明の家族を探す人たちのために、何百冊もアルバムを作成した。
その間母とは手紙を介して対話をしていた。母は、困ったときは知らせるようにと書き、私が父のようにならないようにと常に願っていた。
2011年、母の余命が一年となり、長らく離れていた日本へ帰国し母と過ごした。死期が近づく母の姿を、最期まで執拗に記録することで再び二人の関係を築こうとした。
母の死後、遺品の整理をする中で、母が半世紀以上もの間、押し入れの奥にしまっていた3冊の家族アルバムと邂逅した。それは、父が記録した家族の軌跡だった。やがて、父の生前の痕跡を探し求め記録することで、私は亡き父と対話をしようとしていた。
家族、トラウマ、暴力、喪失、戦争、死との対峙から逃避を繰り返し、私は旅を続けてきた。これは手遅れになってしまった関係性、生き残ってしまった罪悪感に苦しみながら撮影を続け、極限に置かれた状況だけが救いとなり記録することに執着した、私の物語である。
後藤勝
◎会期:2019年11月3日(日)~30日(土)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
初日は午後6時からのオープンとなります。
◎レセプション、およびアーティストトーク
2019年11月3日(日)午後6時~
※簡単な軽食と飲み物をご用意致します。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
助成 | すみだ文化芸術活動助成金
プロフィール:後藤勝
写真家。1966年生まれ、89年に渡米。中南米を放浪後、南米コロンビアで人権擁護団体と活動。97年からアジアを拠点として、内戦や児童売買、エイズなどの社会問題に関わり、人権団体とのキャンペーンなども世界的に行う。2002年International Fund for Documentary Photography(IFDP)賞、04年上野彦馬賞、世界保健機関(WHO) アジア賞、05年さがみはら写真賞を受賞。12年に東京都墨田区で写真総合施設Reminders Photography Strongholdを設立する。
http://www.masarugoto.com/