稲田弥恵アーティストブック「INCOMING MESSAGE」売り切れました！

05/05/2024

稲田弥恵アーティストブック「INCOMING MESSAGE」売り切れました！

稲田弥恵アーティストブック「INCOMING MESSAGE」のご注文受付を開始いたします。
稲田は2019年にリマインダーズフォトグラフィーストロングフィールドで開催された写真集制作ワークショップ「Photobook as Object」に参加し、本作品の制作に取り組んできました。

埼玉県和光市には、今も「キャンプ朝霞」という米軍の区域があります。しかしながら声高に土地返還を求める人はいませんし、アンテナ以外何もない11.8ヘクタールの土地について、住民は特段気にかけていません。
近くに住む稲田自身もこの区域に興味を持たず、この土地で何があったのかを知らずに暮らしていました。
ある日、米軍の敷地内にある壊れそうな小屋に初めて気付いたその瞬間、戦後占領されていた過去が突然稲田の眼前に迫って来ました。それ以降、小屋と近隣に僅かに残っている旧米軍基地の遺構や遺物の撮影を続けながら「キャンプ朝霞（旧Camp Drake）」に関するリサーチを進め、4年の月日を経て一冊のブックにまとめました。本作に関連する展示「稲田弥恵写真展 INCOMING MESSAGE」も開催いたします。会期は8月5日から20日まで。展示会期中は作家が在廊し、会場での写真集制作作業も進めていきます。ぜひお越しください。

「INCOMING MESSAGE」

木造の小さな建造物No.1153を初めて目にした時、「ワーッ」と大勢の人の声が耳に入って来た。その小屋は、時間を擦り抜けて雄弁に声なく語る。小屋が放つ魅力に惹き込まれ、図書館でこの地域にまつわる史実を調べるうちに、史料からは分からない実際生活していた人々について想った。

「誰が、何をしていたんだろう？」
「何を見て、何を想っていたんだろう？」
SNSやインターネットを検索し、占領当時、この近辺に住んでいた人たちに連絡をとり始めた。

私にとってこの小屋は、第二次世界大戦後ここで暮らしていた人々の時間へと扉を開いてくれた不思議な装置だった。かつて、小屋付近の米軍家族住宅に住んでいた人々の時間……米軍占領地区付近で暮らしていた日本人の時間……ベトナム戦争で傷ついた兵士が米軍基地内の病院で過ごした時間……ひとりひとりの大事な忘れ難い思い出に関するメッセージが、私に届いた。

2020年4月、コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、暫く完全に在宅勤務となった。7月に久しぶりに職場に行くと、小屋は影も形も無くなっていた。こうして過去のしるしが容赦なく破壊され、ここにキャンプ・ドレイクがあったことを人々が忘れてしまうのが怖い。

今、自分が踏みしめているこの土地は、過去の誰かが踏みしめていたはずだ。でも、毎日の生活で目にする光景はどんどん新しい建造物で更新されていて、歴史なんてなかったかのように感じる。
今はもう、青い芝生とアンテナしか残っていないモモテ・ビレッジと呼ばれていた米軍家族住宅跡地。さやかに目にすることはできないが、自分が今立っているこの場所は、誰かの忘れられない大切な記憶と時間に繋がっている。

文：稲田弥恵

稲田弥恵写真集「INCOMING MESSAGE」
◎部数：49部（エディション、署名入り）売り切れました！
◎ページ数：188ページ
◎サイズ：203mm x 254mm x 26mm
◎重さ：約800g
◎言語：英語（日本語訳が必要な方は、「別冊日本語訳希望」をあわせて選択して下さい）
◎価格：9,900円（消費税込、別途送料についてはこちらをご確認下さい）
◎写真・編集・印刷・装丁: 稲田弥恵
◎コンセプト、ストーリーライン、アートディレクション：後藤由美（リマインダーズフォトグラフィーストロングホールド）

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稲田弥恵写真集「INCOMING MESSAGE」見開きページより

©︎Mie Inada / INCOMING MESSAGE

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