ナタリア・ドラチンスカヤ 写真展「BINOM」3/8-3/16
「BINOM」は、写真家ナタリア・ドラチンスカヤが、父の写真アーカイブを通じて国家の歴史と個人の物語を交差させた作品です。2001年9月、彼女の父が自ら命を絶ったことをきっかけに始まった本作は、父の隠された人生と、ソ連から現代ロシアへと続く国家の二重性を探求します。
ナタリアの父は、ソ連のKGBで暗号解読者として25年以上勤務し、政府通信を保護するアルゴリズムや暗号化システムの設計に従事していました。その職業は極秘で、家族にも話すことが禁じられていました。父の死後、彼が生きていた「二つの人生」が浮かび上がり、それが国家の二面性と重なることにナタリアは気づきます。一方では平和を唱えるプロパガンダ、もう一方では攻撃的な軍事行動。この二重性は、家族や個人の生活にも深く入り込んでいました。
本展では、父が遺した写真やスライド、家族のアルバム、文書の写し、さらにナタリア自身の写真を用いて、父の二重生活が視覚的に再構成されます。特に、家族の物語を通じて、国家が公式の歴史を書き換えたり操作したりする時代において、個人の歴史が真実を探る上で重要な役割を果たすことを示しています。
ナタリアは2022年に「PHOBOOK AS OBJECT」ワークショップに参加し、本作の基礎を築きました。本展は、彼女が制作したアーティストブック「BINOM」の刊行に合わせて開催されます。作家自身も来日し、展示期間中にアーティストブックの制作を行います。展示会場で結実するアーティストブックとともに、国家と個人、過去と現在、真実とプロパガンダが交錯する本展をぜひご覧ください。
ナタリア・ドラチンスカヤ 写真展「BINOM」3/8-3/16
◎会期:2025年3月8日(土)〜 16日(日)
13:00〜19:00
会期中無休、入場無料
◎オープニングレセプション / アーティストトーク
2025年3月8日(土)14時ごろから
※オープニング+アーティストトークは14時からですのでご注意ください。
展示は13時からご覧いただけます。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
※この他、期間中にトークイベントなどを開催する可能性があります。
随時詳細が決定次第お知らせしますので、SNS等で最新情報をご確認ください。
ナタリア・ドラチンスカヤ |プロフィール
ナタリア・ドラチンスカヤは、旧ソ連生まれで現在アメリカを拠点に活動するビジュアルアーティスト。作品は、個人の記憶を通じて国や文化の広範な歴史を探ることをテーマとしている。儚くも永続する記憶が、過去をどのように処理し再解釈するかを通じて、アイデンティティや未来を形作る力になることを探究している。
写真、紙、コンクリートなどを用いた制作では、具体的なものと儚いものの融合を目指している。モスクワ現代美術研究所(ICAモスクワ)の卒業生であり、これまでにオランダ、ジョージア、日本、ハンガリー、ロシアなどで多数のアートレジデンシーやワークショップに参加。
ウェブサイト:
https://www.drachinskaya.com/
Instagram:
https://www.instagram.com/drachinskaya/
メール: ndrachinskaya@gmail.com