茂木良子写真展「無始の貪」12/23~12/31まで
茂木良子 写真展「無始の貪」を開催いたします。
茂木は2020年にリマインダーズフォトグラフィーストロングフィールドで開催された実験的ワークショップ「ATLAS LAB」に参加し、本作品の制作に取り組んできました。
「無始の貪」(むしのとん) とはお経の懺悔文 (さんげもん) の中に出てくる言葉で、「いつから始まったのか、その始まりももはや分からない欲望」という意味で、懺悔文の中では悔い改めるべきものの一つとして書かれている。親の無始の貪によって過去の幼い子供達は傷つき、ずっと距離を取って生きてきた。しかし、歳を取り病気になった父親の中に変わらずあり続ける無始の貪。それによって突き動かされている父の姿には、ある種の迫力が入り混じっていた。それに惹きつけられるように父親の写真を撮り始めた茂木は、結局は自分の中にも父と同じように無始の貪があると自覚する。
会期中には、初日にレセプションを開催いたします。
また本展開催に合わせて、写真集「無始の貪」を刊行いたします。ご予約、ご注文に関する詳細はこちらのページよりご確認ください。写真展の詳細はFacebook等で随時お知らせいたしますので、ぜひご期待ください。
皆様のご来場、ご高覧をお待ちしております。
「無始の貪」
パーキンソン病になった父は、私が嫌いだった以前の父とは変わり、より動物的になり、私はむしろ親近感を抱けるようになった。昔から自分のやりたい事を優先し、自分の理想と違うものを軽蔑し、家族に目を向けるよりも、自分の人生の価値を高めることに躍起になっていた父は、今や自分の手足のコントロールさえできずにもがいている。支配できない自分の身体に文句を言いながら、それでもやはり自己愛の世界の中で生きる父の姿に、私は以前のような嫌悪感ではなく徐々に興味をいだくようになった。
この父の存在は私にとって何であるのか。
私は野生動物を観察するように父を撮影することで、新たな父との対話を試みてみようと思った。
病気になってからも相変わらず畑仕事をしている。これができなくなったら人生は終わったも同然と言わんばかりに。体の動きが悪い時は、こっそり薬を余分に飲んでいるらしく、そんな時は顔つきも変わり言葉も乱暴になるが、本人は体が動く快感でいっぱいのようだ。まるで新種の生き物のように動き回る。自分がまだ子供だったら恐ろしくて見ていられなかったかもしれないが、大人になった今の私に映る父の貪欲な我儘さには、呆れつつも何か惹きつけられる迫力が入り混じっている。
この本を製作していく過程で、私の中にも父と同じように「無始の貪」がある事に気付いた。そして父は父で、自分の生い立ちやその時代の流れに葛藤したり合わせたりして生きてきたのだろう。それは昔のことを全て良い思い出に書き換えられるような気付きではないけれど、少しだけ自分の中の毒が消えていくような気がした。
茂木良子
茂木良子 写真展「無始の貪」
◎会期:2023年12月23日(土)〜31日(日)13:00~19:00 会期中無休、入場無料
◎オープニングレセプション
2023年12月23日(土)午後7時頃~
※会期中の営業時間に変更が生じる可能性があります、その場合はSNS等で告知していきます。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
プロフィール | 茂木良子
10年程フリーランスカメラマンとして活動後、現在は会社員。2017年に製作した写真集「GREEN PIGEON」は、SIPF 2018 Photobook Open Call のファイナリストに選出される。