浦川和也 写真展「すみだ川画暦(えごよみ)~The Sumida River Almanac〜」3/12 – 3/27まで
Reminders Photography Stronghold Gallery 2022年度の企画展第1弾として、浦川和也 写真展『すみだ川画暦(えごよみ)~The Sumida River Almanac〜』を開催いたします。
浦川は2012年頃から隅田川の定点観測をはじめ、それと並行して隅田川の歴史についてリサーチを進めていました。2018年末、それらの成果を作品としてまとめることを決心し、平成から令和への改元という時代の節目である2019年からオリンピックイヤーのはずだった2020年にかけて丸一年、定点観測による毎日の撮影を実行します。本作は、定点観測に表れる微細な変化と隅田川の歴史に刻まれた大きな変化のコントラストから、私たちを取り巻く時間について再考を試みるプロジェクトです。
本の制作については、撮影完了から2021年3月までは独自に編集作業に取り組み、2021年4月からはRPSのメンターシッププログラムを通して発展させてきました。本展開催に合わせて、アーティストブック「すみだ川画暦~The Sumida River Almanac〜」も刊行いたします。
会期初日にはアーティストトークを開催いたします(会場参加定員あり、FB経由のオンラインでの同時配信も行います)。
写真展の詳細はFacebook等で随時お知らせいたしますので、ぜひご期待ください。
皆様のご来場、ご高覧をお待ちしております。
『すみだ川画暦(えごよみ)~The Sumida River Almanac〜』
私は2012年頃から隅田川の定点観測を続けてきました。天候や潮の干満等によって水面の表情はいつも異なり、川沿いの木々は季節に応じて多様な表情を見せます。さらに行き交う船や構造物の変化、すなわち人の営みが加わることによって川の眺望は一瞬として同じことがありません。しかしこのような微小な変化に対して、私たちの視覚と意識は意外と鈍感です。
ある日、定点観測を続けながら隅田川について調査を進める中で、歌川広重が描いた三枚組の浮世絵に出会いました。広重が描いた隅田川は現代の眺望とは似ても似つかないものでしたが、その川の線形から正に当時私が定点観測で向き合っていた場所であるように感じ、この一致を浮世絵の中に示された地名や社寺の名称から確認することができました。そして毎日の定点観測に観る微細な変化と約200年前に描かれた浮世絵との対比から、美術史家ジョージ・クブラーが提唱した「系統年代」を思い出し、隅田川の歴史を遡りはじめたのです。
クブラーの提唱した「系統年代」とは、私たちが日常の中で使用する時間軸である「絶対年代(absolute age)」と対立する時間性の概念です。彼は、あらゆる事物は各々異なる時間軸である「系統年代(systematic age)」を持っていて、その系統年代に起因する特徴を持つとともに、事物の置かれた時代がもたらす特徴や外観としてのまとまりをも持った複合体になると述べ、絶対年代による等質的な歴史観では捉え難い時間の複数性や非同期性に注目しました。都市は言うまでもなく様々な系統年代を持つ事物の複合体であり、その時間性は系統年代の複合として表れるのです。
東京は約400年という短期間で世界有数の大都市に変貌を遂げましたが、ヨーロッパの諸都市と比べると歴史的記憶に乏しく現在でも相当な速度で変化し続けています。江戸時代以降、改変の歴史を繰り返しながら首都を代表する川であり続けてきた隅田川は、江戸・東京のドラスティックな変化を見てきた生き証人と言えるでしょう。200年前とは全く変わってしまった眺望と200年前から変わらず残る線形の対比、一年の中に見える微細な変化、そして隅田川にまつわる様々なエピソード、これらをひとつのオブジェクトに圧縮した本プロジェクトは、東京の生き証人である隅田川の系統年代を浮き彫りにするのです。
浦川和也 写真展「すみだ川画暦」
◎会期:2022年3月12日(土)〜 27日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
◎アーティストトーク
2022年3月12日(土)午後7時~(Facebookライブ配信も同時に行います。)
本展開催に合わせて、アーティストトークを行います。人数把握のため会場参加ご希望の方はこちらからお申し込みをお願いいたします。
参加申込フォームはこちらです。↓
https://forms.gle/HHLWJvEeGmwoYv2j6
※写真展の入場にはお申し込みは必要ありません。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
助成 | すみだ文化芸術活動助成金
浦川和也 | プロフィール
写真家/一級建築士
1972 年 札幌出身、東京在住。
1996 年 大阪市立大学工学部建築学科卒業(建築史研究室)。
大学卒業後は建設コンサルタントと設計事務所で建築設計やまちづくりの業務に従事。2002 年に都市と建築の魅力を伝えることを目的にウェブサイトCittá Mateiaを開設。現在はプロジェクトマネージャーやアドバイザーとして様々な建設プロジェクトに関わりながら、写真家として活動している。
2016年Reminders Photography Strongholdにて開催された写真集制作ワークショップ「Photobook as object」に参加し、アーティストブック「Tokyo Perspective」を制作、販売を行なった。