第17回RPSグラント受賞者:Piotr Zbierski
Piotr Zbierskiのプロポーザル「Push the Sky Away」が、2017年12月に申し込みが締め切られた第17回Reminders Photography Strongholdグラントを授賞しました。
審査員は、ペギー・スー・アミソン、マリー・レリーヴル、ディーン・チャプマン、マイケル・ドーニー、スヴェトラナ・バチバノワ、ステートン・ウインター、キラ・ポラック、アンドレイ・ポリカノフ、エリック・ブルーンの9名です。
Push the Sky Away
「Push the Sky Away」は過去に消えてしまったもの、未来へ続くものが作品の中の各部分に帰結した連作だ。このクリエイティブな道筋が、我々の文化的記号の元となった太古から続く文化への興味を私に与えてくれた。その結果、変わることがない、そしてこれまでも変わることがなかった、と個人的に信じている潜在的構造を引き出そうと試みることになった。この潜在的構造が感情、儀式、行動など、あらゆる文化において共有される要素の中に存在していること、そして写真こそがこの構造に届くことができる、と私は感じている。
ある意味、我々はそれぞれ原始から生を受け、そこに終わりを迎えている。始めに触覚があり、これが私たちを現実の中へと留め置き、地に足がついた感覚を持たせてくれる。そこから広く共有され、体験として得られた自然の共通の要素へと移っていく。自然界は、 人間の進化と文明の発展の観念の対極として現れる、バランスと協調を与えてくれる。
私にとって写真とは、人びととの官能的な出会いである。
写真というのは、人びとに近づくことを許してくれる媒体で、この理由から私は写真という手法を選んだ。私の作品は主に、人間の感情の核心へと入り込むことを目指している。人間がどう創られたか、原始の村からやって来た人間を写真によって見せようとしている。
写真が推移する、つまり、自身と他者、そして時間の経過を表現するために使える言語であるという理由から、それが大変意義深いものであると私は信じている。しかし、それぞれの変化というのは、新しさや変化へと導くだけでなく、 現在からの離脱の始まりであるという点において、ある意味では災難でもある。
また、変異と多様性、その根源が同族であり霊的である点においても疑問がある。写真や実際の姿をみて、自分の顔が祖父やその他の家族に似ていると思った経験は誰にでもあるはずだ。子孫というのは結局、その祖先の生物学的変異なのだ。
自身が持つ感覚で経験したことのない遠い過去へと手をのばすにつれ、それはさらに複雑になっていく。私にとっての答えというのは、それが自然的、社会的、心理的要素への本能的な反応、つまり、痛み、幸福感、恍惚感などの要素であるということだ。このような要素をイメージの中にすんなりと収めることは可能だろうか?生の文脈の中でのみ、それは可能だ。
これらの目標の多くは達成不可能のようではあるが、私にとってクリエイティブな仕事というのは結果を得ることではなく、正しい方向に向かって進むことなのだ。写真家というのは結局、道に迷うだけの価値がある場において我を忘れることができる者なのだ。
Piotr Zbierski
Piotr Zbierski(1987年生まれ、ウッチ在住)。国立映画大学で写真を学ぶ。3つの個展(「White Elephants」、「Here」、「Love has to be reinvented」)を開催した他、グループ展にも参加。作品は「Photokina」、「Lab East」に掲載。ポーランド、ドイツ、ポルトガル、ロシア、スロヴァキアなど各国で展示を行ったほか、雑誌(「Shots Magazine」、「Ninja Mag」、「Archivo Zine」、「Die Nacht」、「Gup Magazine」)などでも紹介された。2012年にはライカ・オスカー・バルナック新人賞を受賞。ドイツ・ボーズ写真賞にノミネートされ、シリーズの一つである「Pass by me」はその他多くの賞(Les Nuits Photographiques 2012、テリー・オニール賞) にも入選。作品はアルル(2012年)で展示され、清里フォトアートミュージアムに収蔵されている。ホームページ:http://www.pushtheskybook.com
日本語訳文責:奥山美由紀