第18回RPSグラント受賞者:Fabian Muir
2018年6月に申し込みが締め切られた第18回Reminders Photography Strongholdグラントにて2名の受賞が決定しました。 Guillaume Simoneauのプロポーザル「MURDER」 と Fabian Muirのプロポーザル「Intimate Perspectives on North Korea」です。
審査員は、ペギー・スー・アミソン、マリー・レリーヴル、トゥーン・ファン・デル・ハイデン、エリック・ブルーン、エメリン・ヤング、アンドレイ・ポリカノフ、ディーン・チャプマンの7名です。
2019年には写真展の開催も予定しております。ぜひご期待ください。
「Intimate Perspectives on North Korea」
これは朝鮮民主主義人民共和国での2年間に撮影した写真からセレクトしたものだ。訪問者たちに課された制約の中で、このシリーズが試みているのは、この国と人々の公正で、正直で、親密な描写をすることだ。
私達が目にする北朝鮮の画像や映像の多くが孕む問題は、平壌のみに重きを置かれ、その多くが北朝鮮へ一度行っただけの写真家によって撮影されているという点だ。首都の平壌は国全体を代表しているわけでは全く無い。平壌に焦点を当てた写真シリーズのほとんどは、残念ながら巨大建築、有名な地下鉄、パレードなどを描写しているだけで何も新しいものはなく、また北朝鮮全体における生活が一体どのようなものなのかもほとんど引き出されてはいない。
その一方、一部の写真家たちは、平壌から写真を秘密裏に持ち出した自分は「英雄」だということを強調させるという物語に抗うことができない。このようなプロジェクトは、主題と同じぐらい写真家自身がストーリーの中心となってしまう。しかし現実は、違法と見なされるのは兵士や建設作業員の写真のみで、国を出るときにカメラをチェックされるようなことも無いのだ。
これらすべてが、北朝鮮の歪められた常套句的な理解を招いてしまう。特にこの理由から、私がここに提示する写真は国全体で撮影されたものであり、平壌で撮影されたものは2枚だけである。
正直に言えば、北朝鮮で撮影することは容易ではない。しかし、多くのことを見て体験することは可能である。何度も北朝鮮へ渡航した中で、あらゆる所で見かける指導者たちの肖像などのよくあるクリシェを繰り返すだけではないイメージ、そして、あまり知られていない、親密さを持った(北)朝鮮を撮影した。
多くの主要メディアが見せるように、悪政と絡んだ北朝鮮というのはあまりにも単純化されている。このささやかなシリーズが少しだけでも深く掘り下げ、人々を北朝鮮への短いながらも興味深い旅へと連れ出し、思いがけない視点を与えてくれることを私は希望している。
Fabian Muir
ファビアン・ムイル、オーストラリア人写真家。彼のプロジェクトと仕事の主要な動機は、人道問題に焦点を当てたビジュアル・ストーリーテリングである。ムイルの写真は個展、グループ展、各国のフェスティバルで展示されたほか、著名なコレクションにも収められた。「Blue Burqa in a Sunburnt Country」(2014年)、「Urban Burqa」(2017年)というタイトルのファインアートのシリーズは、社会的挑戦と難民へ対する不当な行為を撮影したものだ。2年をかけて撮影した北朝鮮の日々の生活は、各国のプレス、テレビ、ラジオなどで取り上げられた。
ムイルはエディー・アダムズ(アメリカ)から学び、Michael Reid ギャラリー(シドニー、ベルリン)の所属作家。マグナム写真賞(入選)、マイアミ・ストリートフォト・フェスティバル(入選)、PDNエマージング・フォトグラファー賞(受賞)、FotoEvidenceブック賞(入選)、ソニーWPA/ツァイス写真賞(入選)、Reminders Photography Stronghold (東京)プロジェクト(入選)およびグラント受賞。http://www.fabianmuir.com
日本語訳文責:奥山美由紀