第26回グラント受賞作家エミリオ・エスペヘル写真展『Where God Is Blind』11/21-11/29

この度、第26回Reminders Photography Strongholdグラントを受賞したエミリオ・エスペヘルによる写真展『Where God Is Blind』を開催いたします。今回、エミリオ・エスペヘルの本作品が審査員である、アレクサ・ベッカー、エリック・ブルーン、ジュゼッペ・オリヴェリオ、ステートン・ウィンター、マリナ・パウレンカの5名によって選ばれました。

『Where God Is Blind』(2018–2026)は、メキシコで長期化する暴力がもたらしたものを記録したエミリオ・エスペヘルの写真シリーズです。国内各地で撮影され、強制的な移住、村の放棄、行方不明者の捜索、そしてそうした土地に根づく信仰の姿を写しています。ティフアナでの報道写真家としての経験から始まった本プロジェクトは、国内外で作られてきた「暴力的なメキシコ」というイメージに焦点を当てています。

会期中は作家本人も来日し、トークイベントも予定されています。
詳細は後日SNS等で発表いたしますのでぜひご期待ください。会期中、皆様のお越しをお待ちしております。

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind


『Where God Is Blind』

神が介入しないほど、私たちは信じる。

ある夜、ティフアナで、私は路上で死んでいる男を見た。男はカウボーイブーツを履き、映画『カーズ』のプリントが入った白いTシャツを着ていた。数メートル先、警察の規制線の向こうでは、何人かの人々がバスを待っていた。制服姿の子どもたちとその母親、菓子を売り歩く女性。男がそこに横たわったままの間も、人々は停留所にやって来続けた。

2018年のことだ。私は報道写真家として働くためにティフアナに移り住み、ノタ・ロハ(事件や事故の現場を扱うメキシコの扇情的な報道)の写真家についてドキュメンタリーを制作しながら、彼の仕事に同行していた。夜に出かけ、駐車場に停めた古い車の中でブラックコーヒーを飲みながら何時間も過ごした。緊急無線に耳を傾け、次の通報を待った。ときどき私は自分たちを、硝煙と死者を求めて夜の街をさまようハゲワシのように思った。

私が初めて「暴力的なメキシコ」というイメージに触れたのは、子どもの頃、ノタ・ロハを通してだった。家のペンキを塗るとき、床や窓枠は新聞紙で覆われ、そこにはペンキの飛沫にまみれて、「家賃の取り立てで殺害!」や「犬肉のバルバコア」といった見出しが並んでいた。私はそれを、恐れと警戒の入り混じった目で見ていた。新聞売りは拡声器でそうした悲劇を告げながら近所を回っていた。私が何よりも恐れていたのは、その中に友人や家族の名前を聞くことだった。メキシコ人は死と特別な関係を持っている――私はそれを目にし、そう思いながら育った。

2018年以来、私はメキシコ各地で暴力がもたらしたものを撮影してきた。故郷を追われた人々、行方不明の身内を捜す家族、麻薬戦争。どこへ行っても、人々は生き続けている。そしてほとんどいつも、盲目的に信仰にすがっている。

あるとき、ミチョアカン州アギリージャへ向かう途中、道端で聖ユダ・タダイの祭壇を見つけた。絶望的な状況にある者の守護聖人である。そこには祈りの言葉が記されていた。「どうかこの願いをあなたの御手に委ね、あなたにしかできないことをなしてください。道なき所に道を開き、痛みのある所に平和を、すべてが失われたかに見える所に希望をもたらしてください。主よ、あなたに信頼します。アーメン」。周囲にはゴーストタウンが広がっていた。暴力によって住民が追われ、空っぽになった集落である。

メキシコでは「希望は最後に失われるもの」と言う。何年もこうした場所を撮影してきて、ときどき思う。最後に失われるのは、信仰なのではないかと。誰も応えてくれない場所で、人々は聖ユダ・タダイに、グアダルーペの聖母に、サンタ・ムエルテ(死を聖人として崇める民間信仰)に祈る。ほかの誰にも与えられないものを願って。わが子を見つけること、家に帰ること、今夜何も起こらないこと。

ある日、電話があった。私にこの仕事を教えてくれた写真家の一人が殺されたという。彼は何年もこの街の暴力を撮り続けてきた。今度は彼の名前が、ニュースの見出しやSNSに流れていた。子どもの頃からずっと恐れていたことが起きたのだ。ニュースの中に、知っている人の名前を聞くこと。

長いあいだ、私たちは死に慣れた社会として描かれてきた。そして私たち自身も、そう描いてきた。私たちが共に生きているのは死ではなく、死者だ。私たちはできるやり方で不幸をやり過ごしている。耐え、祈り、ときには笑いながら。

エミリオ・エスペヘル


第26回 RPSグラント受賞作家エミリオ・エスペヘル写真展『Where God Is Blind』

◎会期
2026年11月21日(土)〜 11月29日(日)
13:00〜19:00|会期中無休

◎オープニングレセプション/アーティストトーク
2026年11月21日(土)14:00〜
※展示は午後1時よりご覧いただけます。

◎会場
Reminders Photography Strongholdギャラリー

東京都墨田区東向島2-38-5

◎入場料無料 / 事前予約不要

展覧会および関連イベントの最新情報は、FacebookイベントページおよびInstagramで随時お知らせします。

RPSグラントについて
RPSグラントは、写真を軸とした展覧会企画を広く募集し、RPS審査委員会による選考を通過した企画に、RPSのギャラリースペースを無償で提供するプログラムです。
受賞者は、最長15日間の提供期間内で、通常2回の週末を含む展覧会を開催することができます。
対象
写真家、キュレーター、ギャラリスト、ほか

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

 

©︎Emilio Espejel / Where God Is Blind

プロフィール | エミリオ・エスペヘル

1993年メキシコシティ生まれ。
自らが育った国メキシコを拠点に活動する独学のドキュメンタリー写真家。
フリーランスとして、AP通信などの通信社や『エル・パイス』『ガーディアン』などのメディアと仕事をしてきた。2018年より、メキシコ北部から南部の各地で、長期化する暴力とそれが日常生活に与える影響を記録している。2025年、『Where God Is Blind』で第26回Reminders Photography Strongholdグラントを受賞。2026年には、ニューヨークのブロンクス・ドキュメンタリー・センターで開催されたLatin American Foto Festivalに作品が出展された。