Picture of my life: daniel's choice story by ©Kosuke Okahara






文:岡原功祐
freelance documentary photographer
croski@cyber.email.ne.jp
[関連ページ]
The Town of Silence バランカベルメハ・コロンビア 2003〜2004
http://www.kosuke.se/colombia/top.htm (英ページ)







国営石油企業エコペトロルが本社を置き、コロンビア経済の要所の一つとなって いる町、バランカベルメハ。
人口25万の小さな町では、暗殺が頻発している。
元々左翼ゲリラの活動地域だったこの町を準軍組織 (=AUC)が掌握したのは7年ほど前。それ以来AUCは町を支配し、ゲリラやゲリラのシンパと見なす者を殺し続けている。

 
23歳になるダニエルはこの町で生まれ育った。19 歳の時、仕事もなくふらふらしとしていた彼に
「国家の敵であり、誘拐を繰り返す左翼ゲリラから治 安を守る。強盗や麻薬といった社会悪とされるものに対抗する」そうAUCの人間が声をかけた。暴力が日常化した町で育ったダニエルにとって、AUCは遠い 存在ではなかった。金をもらえ、組織の中で重要な役割を担う事で人から認められる存在になることにも魅力を感じた。そして、AUCの一派として銃を取るこ とを選び、以来25人を殺してきた


バランカベルメハでは、約40人の殺し屋がAUCの ために働いていると言われている。中には脅されて仕方のない場合や、左翼ゲリラに身内を殺され、その恨みからAUCに加わる者、金や生活のため、この道を 選択する理由はそれぞれである。


「初めて人を殺したときは、怖くて眠れなかった。で も4人目くらいからだんだん慣れてきて、それ以降は殺しても何も感じなくなったよ」
淡々と語る彼に
「人を殺すのがすきなのか?」そう聞くと、天井を見つめたまま黙りこんでしまった。
数十秒後、押し殺すような声で喋りだした。
「殺しが良くないというのは分かっているさ。でもこ れが俺の生活なんだ。これで金をもらって飯を食っているんだ。殺すのはゲリラの仲間や強盗、社会にとって毒となる奴らばかりだ。だから仕方ない」


人を殺してダニエルが手にする金は月にわずか200 ドル。すでに2人の子の親でもある。
「金は良くない。かと言って他に仕事もない。もし他 に良い仕事があるなら、殺し屋を辞める奴は沢山いるだろう。でも俺については何も言えない」様々な矛盾を感じながら、殺しを正当化する自分に疑問を抱かな いわけではない。しかし、家族のために家を建て、生活を助けてくれているAUCに 恩も感じていると言う。


暴力が日常化し貧しい環境の中で生きる故にダニエルは殺し屋として生きる事を選んだ。彼にとって、 それが自分の存在を正当化出来る選択だった。


もし彼が日本に生まれていたら、今 頃は 渋谷あたりにいる若者の一人だったかもしれないが。




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