髙木佑輔 写真展「SPIN」11/3~11/23まで
本作はアルコール依存症が家族に刻み込んだ傷跡を振り返るとともに、世代間連鎖することへの不安に対峙した作品となっております。
アルコールに飲み込まれた父親とその元で暮らした髙木、底知れぬ不安を抱えながらも、その中で見つけた自分自身と向き合い、依存症となった父親の姿から学んだ感情と未来を表現します。
会期中の初日にはFacebook経由でのオンラインアーティストトークを配信いたします。また本展開催に合わせ、写真集「SPIN」を刊行予定です。
皆様のご来場、ご高覧をお待ちしております。
写真展の詳細はFacebook等で随時お知らせいたしますので、ぜひご期待ください。
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©️Yusuke Takagi / SPIN
「SPIN」
それとは裏腹に私の幼少期の記憶はぽっかりと葬り去られている。
入院後父は、長年にわたるアルコールの多量摂取によって脳が異常に萎縮し、アルコール性認知症に罹患していることが判明した。
アルコール依存症であることを本人は全く理解も認識もできず、帰宅をすると再飲酒の可能性が極めて高いため、入院から8ヶ月ほどで介護付き老人ホームに移動した。
そんなアルコール依存症の父を通して私は、人間の弱さ、人生の悲哀と虚しさ、命の儚さに直面させられた。そんな父を持つ環境で育った私自身の過去を振り返ると、奥底に眠っていた様々な記憶と感情に対峙せざるを得なくなった。
常に満たされない感覚や孤独感、罪悪感、疎外感、理由なき不満と制御不能な感情等々、幼少期に抱えていたのだろう未消化なままの記憶と感情を再体験させられた。
当時自分にとって当たり前だった日常が、世間的には当たり前でないのだということを思い知らされ、驚愕した。
そして何より、それらの記憶と感情に蓋をするために、防衛的・警戒的に振る舞っていた自分を「発見」し、私という存在を突きつけられた。
父を破滅させたアルコールという刃が、親子として血が繋がっている私へと反転した。
そしてその刃が私の息子にも牙を向くのではないかという底知れぬ不安を今私は抱いている。
私も飲みすぎて息子に対して口汚く接したり感情を爆発させてしまうことがある。
私が体験した忌まわしい経験を息子にさせているのではないかと思うとやるせなくなり、連鎖という言葉が亡霊のようにつきまとう。
でも私と息子は連鎖という呪縛から解き放たれるべく、ともに歩んでいきたい。
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◎会期:2020年11月3日(火・祝)〜 23日(月・祝)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
2020年11月3日(火・祝)午後7時~
高木佑輔 × 斉藤章佳(精神保健福祉士・社会福祉士、大船榎本クリニック精神保健福祉部長)
2020年11月6日(金)午後7時~
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
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©️Yusuke Takagi / SPIN
プロフィール | 高木佑輔
1979年東京都生まれ。 明治学院大学社会学部社会学科卒業後、2005年からフリーランスの写真家として活動を開始。辺境に生きる人々の人権を主なテーマとしてアジア・アフリカを取材し、2010年にビルマ人の人身売買をテーマにした作品でHuman Rights Award in FCCT/OnAsia PHOTO CONTEST 2010 を受賞。2011年の東日本大震災を機に日本社会をテーマとする。福島第一原子力発電所事故後の世界を父親目線から捉えたダミーブックは2017 FUAM Istanbul Photobook Dummy Award でSpecial Prizeを受賞し、2018年にAKINA Booksより写真集『Kagerou』を出版、米タイム誌で2018年ベスト写真集の1冊に選出された。
https://www.yusuketakagi.net/