髙木佑輔写真展「SPIN L’artiere Edition 出版記念展」11/23-12/4

Reminders Photography Stronghold 2022年度企画展第4弾は髙木佑輔写真展「SPIN L’artiere Edition 出版記念展」です。

髙木は2019年にRPSで開催された写真集制作ワークショップ「Photobook Masterclass」に参加し、アルコール依存症とその連鎖をテーマとした本作に取り組みました。2020年11月に完全手製のアーティストブックを限定72部で発表し、同作品は2021年にフォトエスパーニャ2021写真集自主制作部門を受賞、2022年にはPhotoBoox Award 2022を受賞し、同賞を受けて普及版が6月にイタリアの出版社 L’artiereから刊行されることとなりました。

L’artiereは印刷の品質に高い評価を得ているGrafiche dell’artireの出版部門として数々の優れたアートブック、写真集を出版しています。本展示では髙木の写真集を印刷した時の試し刷り、通称「刷り出し」をイタリアから持ち帰り、展示公開、写真集制作の過程を再現します。

©Yusuke Takagi / SPIN


SPIN

写真の中で口づけする父と幼い私。

それとは裏腹に私の幼少期の記憶はぽっかりと葬り去られている。

父がアルコール依存症で病院に搬送されてから2年半が経つ。私が物心ついた頃から父はすでに酒量が多く、入院直前の数年は、文字通りアルコールに取り憑かれたように飲んでは寝てを繰り返し、その生活は凄惨を極めていた。
入院後父は、長年にわたるアルコールの多量摂取によって脳が異常に萎縮し、アルコール性認知症に罹患していることが判明した。アルコール依存症であることを本人は全く理解も認識もできず、帰宅をすると再飲酒の可能性が極めて高いため、入院から8ヶ月ほどで介護付き老人ホームに移動した。

心の空白に忍び寄り、いつしか精神と肉体をボロボロにするアルコールに飲み込まれた父。
そんなアルコール依存症の父を通して私は、人間の弱さ、人生の悲哀と虚しさ、命の儚さに直面させられた。そんな父を持つ環境で育った私自身の過去を振り返ると、孤独感、罪悪感、疎外感等々、幼少期に抱えていたのだろう未消化なままの記憶と感情を再体験させられた。父を破滅させたアルコールという刃が、親子として血が繋がっている私へと反転した。そしてその刃が私の息子にも牙を剥くのではないかという底知れぬ不安を今私は抱き、連鎖という言葉が亡霊のようにつきまとう。

アルコールに依存するようになった父も、そんな父のもとで育った私も、心に抱えきれない空白がある。誰しも心の空白を埋めるためにアルコールに依存する可能性がありうるのだから、アルコール依存症者に対して堕落のレッテルを貼るのではなく、心に空白を抱いた一人の人間として理解することを私は父の姿から学んだ。残念ながら父の回復は極めて難しい。でも私と息子は連鎖という呪縛から解き放たれるべく、ともに歩んでいきたい。

文:髙木佑輔


◉会期:2022年11月23日(水・勤労感謝の日)〜12月4日(日)午後1時から7時まで

◉オープニングレセプション+アーティストトーク:11月23日(水)午後7時頃から。
オープニングレセプション、アーティストトークでの飲食の提供はございません。マスクの着用、手洗い、消毒等、感染拡大防止にご協力をお願いいたします。

◉会場:Reminders Photography Stronghold ギャラリー
東京都墨田区東向島2−38−5

◉写真集のお取り扱い
「SPIN」アーティストブック
174pp / 72部
写真 / 編集 / 製本 / シルクスクリーン : 髙木佑輔

RPS限定特典付き写真集「SPIN」L’artiere 版
174pp
出版:L’artiere
プロダクション:CEIBA editions

作家プロフィール

1979年東京都生まれ。 明治学院大学社会学部社会学科卒業後、2005年からフリーランスの写真家として活動を開始。辺境に生きる人々の人権を主なテーマとしてアジア・アフリカを取材し、2010年にビルマ人の人身売買をテーマにした作品でHuman Rights Award in FCCT/OnAsia PHOTO CONTEST 2010 を受賞。2011年の東日本大震災を機に日本社会をテーマとする。福島第一原子力発電所事故後の世界を父親となった自身の視線から捉えたダミーブックは2017 FUAM Istanbul Photobook Dummy Award でSpecial Prizeを受賞し、2018年にAKINA Booksより写真集『Kagerou』を出版、米タイム誌が2018年ベスト写真集の1冊に選出した。アルコール依存症とその連鎖をテーマにしたアーティストブック「SPIN」を2020年11月に発表し、2021年にフォトエスパーニャ2021写真集自主制作部門を受賞、2022年にはPhotoBoox Award 2022を受賞し、同賞を受けて普及版が2022年6月にL’artiereから刊行された。

 

©Yusuke Takagi / SPIN

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©️Yusuke Takagi / SPIN

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©Yusuke Takagi / SPIN L’artiere

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©Yusuke Takagi / SPIN L’artiere

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