Become like water my friend(Sohrab Huraとの最近のやりとりから)
とある原稿のために本の選出をしており、その一冊をLife is Elsewhereにしようと思い、ソラブにメールを送った。
あなたに聞く様なことでもないけど、あなたの本のなかにドキュメンタリーとしてなにか新しいアプローチがあったりする?
書かねばならない核心の部分を本人に聞くのが一番だと思ったからだ。
結局、原稿にはその辺りの事まで書く必要もなさそうなので、そのやりとりについてご紹介しようと思う。
自分自身の本を分析するのは自分にとってとても難しいことです。特にあなたの質問の様な重要な場合は尚更です。新しいと言えるかどうかはわからないけど、写真と映画、音楽文学以外の間にあるものとでもいうか、本という形に向って生成発展的に自分が導かれたという感じです。Dayanita Singhという写真家が映画的であるという様なことも言っていました。
レイアウトについて言えば、この本は極めて伝統的だと言えますね、但し、構成の流れはそうではないかもしれません。自分にとっては本と文章とが確かな場所に収まっていることが重要で、写真がページの端から端まで切れずに配されている、そして休憩を入れる様にそこに見開きがあり、アントワン(ダカタ)の写真が黒い空間とともにペアになっている。それは紹介へと導く作りになっていて、そこからまた違ったピッチで写真が流れていきます。
ダミーを作っているときにクラッシック音楽をやっている友人が最初のムーブメント(ソナタ)についてその意味を私に教えてくれました。本の構成には一種の同じ調べが存在し、それが継続していくことで、流れを展開させていく手助けをしている。
ですが、切り替えのためのアイデアというのもとても重要です。そういう意味で「季節感」がとても自分には重要なのです。それはインドという土地柄も影響しているかもしれません。特に北にいる私には5つの季節を嗅ぎ取ることが出来、そのアプローチが出来ると思っています。その季節感とは極端で変化があり、季節感というものが物語に変化を持たせる事を可能にしていると思います。季節そのものを取り上げるというのではなく、季節感の相違に存在するストーリーを見つけ出すという意味です。本の中に出てくる愛犬エルサも花が咲いたあと間もなく亡くなりました。それもまさに季節そのものを意味していると言えます。
作品のヒントを得るために、様々な作品を見返したりすることがありましたが、自分にとって、更には現代の写真家にとって、最も重要な事をかのブルース・リーが言っているのでご紹介します。
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「あなたは無形でなくてはいけない、定まった形に収まってはいけない、水の様であること。あなたが水をコップに注いだとき、それがコップになる様に。あなたが瓶に水を注いだとき、それが瓶となる様に。あなたがティーポットに水を注いだとき、それがティーポットになる様に。水は滴ることも出来るし、砕けてしまうこともある。水の様になりなさい、友よ」
因みに、今回のLife is Elsewhere、手元に残った200部を必要な宛先に送ったりしていたそうだ。セカンドエディションは出さないのか?と聞いた所、それをする前にまた次の本を作りたい、それは2017年を目標にしている。それが終わった後でLife is Elsewhereのセカンドエディションを作ることを考えたい、と。
RPS後藤由美
補足:この後、そもそもの出会いを遡って2008年当時のアンコールフォトフェスティバルの時の写真などを見返していました。この展示を見ていなかったら、彼の作品の本当の良さに触れることはなかったと思います。
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2008年アンコールフォトフェスティバルの展示風景
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2008年アンコールフォトフェスティバルの展示風景 真ん中がSohrab Hura.
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2011年、アンコールフォトフェスティバル公開ポートフォリオレビューの時のSohrab Hura.
※つい先日写真家によるフォトブックレビューでLife is Elsewhereのレビューが出た所なので、是非こちらもどうぞ。