REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #27 Red String

06/20/2016

不定期更新、写真家による写真集レビュー、今回は現在、RPSで写真展「ぐるぐる」を開催中の松村和彦が家族を取り上げた写真集の先輩、藤井ヨシカツさんの「Red String」を取り上げます。

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どうして家族を撮った写真集に惹かれるのか？
書店にあれば手にとってしまう。
自分も家族の写真を撮っている。
でも、いつも思う。
どうしてか。

藤井ヨシカツさんの「Red String」を見て、改めて考えさせられた。

本を開く。
すると、左側に父に抱かれた赤ちゃんの藤井さん、そして右側に母に抱かれた同じ赤ちゃんが現れる。赤い糸がチラチラ。糸は途切れている。
両側は独立した冊子になっていて、別々にページが開く。外に向かって。
何ページかめくると両親の離婚がテーマだと気付く。
とてもプライベートで繊細なテーマに驚きつつ、「どうして両親の離婚を本に？」と疑問が湧いた。

ページをめくっていく。
今と昔の写真が入ったり来たりする。別々に暮らす父と母、かつて家族だった頃の父と母、そして小さな子どもたち。
しばらくすると、これは両親の話ではなく、離婚した両親を息子がどう受け止めるかについての話のような気がしてきた。

そう思った瞬間、切実さに心が揺れた。
夫婦ではなくなる。運命の赤い糸は2人を結んでいなかったのか。
けれども、その結婚は息子や娘を残した。
「一体、自分はどんな存在なのか」。子どもたちの声が聞こえてくるような気がした。

本がどう終わるか。
家族の写真集が気になる人には是非、実物で見てみてほしい。

さて、どうして家族を撮った写真集に惹かれるのか、を考えた結果はと言うと、
藤井さんの写真集を閉じた時に感じる気持ちが答えかもしれない。

松村和彦（写真家）

※RPS図書館では藤井さんが作った自作版とその後出版された普及版の２種類が閲覧できます。
ご本人のウェブサイトでもご覧いただけます。

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