REMINDERS PHOTOBOOK REVIEW #25 Anecdotal

03/06/2016

不定期更新、久々の写真家による写真集レビュー、今回は写真家の木村肇くんによるDavid FathiのAnecdotalです。
2014年度にパリで初めて開催されたROCK YOUR DUMMY AWARD。この第一回目の受賞者となったDavid Fathi、彼が先日来日しRPSでは「写真家と写真集をレビューする日」を開催、複雑な彼の本について直接本人から話を聞き、理解を深める機会を得ました。

この本はとても興味深く、なるべく多くの人に表面上のグラフィックのユニークさだけでなく、内容を十分理解して見てもらいたいと感じます。また、本作りに興味のある方にも最適な参考書でもあると思っています。RPSの図書室もありますので、是非、見に来てください。では、木村肇くんのレビューをどうぞ。

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David Fathiと彼の本「Anecdtotal」RPSの写真集図書室にて

『1958年3月11日、核爆弾を積んだB-47機が誤って爆弾をサスウカロライナ、マーズブルフ上空で落下させてしまった。爆弾には取り外し可能な核分裂用のウランとプルトニウムは取り付けられておらず、爆縮用火薬のみが落下。この爆発によりグレッグ一家6名が負傷、一家の家屋が半壊した。一家は被害額分の慰謝料を国から付与された。その中には爆発に巻き込まれて消えてしまった6羽から12羽の鶏も含まれていた。』

この話を漠然と示した時、どれくらいの人がそれを事実として認識するのだろうか。

1945年6月、北緯33.677° 西経-106.475°から始まった歴史の中で既にその大半を知る人はいない。キノコ雲のスーツで一世を風靡した「ミス原子爆弾」がかつてアメリカに存在した事を我々が知らない様に、日本の歴史に刻まれた2つの事実はその形を変えつつある。
物事の真偽を問う際に、それを事実たらしめる要素のひとつに「時間」が挙げられる。その事象が現在という点から離れれば離れるほど過去未来に関わらず、その信憑性は薄くなっていく。それは巻末でキューブリックが言及している様に、僕たちの死に対する距離感とも類似している。

「我々の大多数は抽象的なものに対して反応を示さない。直接的な経験にのみ反応を示す。」

いつの日か、ぼくらの目の前で「逸話」がその像を結ぼうとする時、それらは初めて自分たちが経験するであろう事実になり変わるのかも知れない。

木村肇（写真家）

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