長谷川美祈 写真展「YOU AND ME everyday everywhere every time」6/12~6/27まで

2021年度の第一弾の企画展として長谷川美祈 写真展「YOU AND ME everyday everywhere everytime」を開催いたします。

長谷川はこれまで、2015年のPHOTOBOOK AS OBJECTにて「The Path Of Million Pens」を、2017年にはPhotobook Master Classにて「Internal Notebook」を制作。
本作「YOU AND ME everyday everywhere everytime」は、RPSの後藤由美によるメンターシッププログラムを通して取り組んだ作品となります。同居していた義母が闘病の末他界したことから、長谷川は心に残る後悔や喪失感を抱え、家族の死をどう記憶し受け止めていくのか考えるようになりました。
本展示では義母のアルバムを通してその人生を辿りながら、大切な人の死について考察していきます。
また、6月が命日であることからこの時期での写真展開催となりました。

本展開催に合わせて、アーティストブック「YOU AND ME everyday everywhere everytime」を刊行いたします。こちらのご案内は今暫くお待ちください。
皆様のご来場、ご高覧をお待ちしております。

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

「YOU AND ME everyday everywhere everytime」

「死」が目に見える形で想像できるようになるまで、いつも通りの生活をすることが、家族皆にとっても良いことだと思っていた。

義母は2016年9月に胆管癌を患い、手術、抗癌剤治療を受けたが、1年後の2017年9月に再発。もう手術はできず、最適な治療も見つからなかった。
それでも、様子はいつもと変わりなくジムに行き家事をし精力的だった。

自宅療養を主治医から告げられてから、義母の状態はあっという間に悪化していった。朝、昼、晩と大量の薬。訪問医、訪問看護の手配、レンタルの介護ベッドを1階に置き、数日で車椅子が必要になり、少し経つと、ポータブルトイレを設置しなければならなくなった。そしてとろみをつけた飲み物、食べ物以外は受け付けなくなった。

慣れない介護で家族全員が疲弊していった。
「家族が休む為にも1週間だけホスピスに入ってみたらどうか?」
訪問医から提案があったその数日後には、
「ホスピスへ急いだ方がいいかもしれない。あと1週間が山場だ」
と告げられた。

ホスピスへ向かう介護タクシーの中で、いつも気丈だった義母が
「こわい」と私の手を握った。
到着すると、医師から電動ポンプでモルヒネ投与の提案がされた。
「どう思う?」
と聞かれたが、私は答えられなかった。
翌日「痛みがひどいなら、やった方がいいのでは?」と答えた。
義母はモルヒネの投与を了承した。

間もなく意思の疎通ができなくなった。
「飛行機が・・・」
と、うわ言を一度言ったきり声を聞くことはなくなった。

毎日、娘の下校時に迎えに行き、一緒にホスピスへ通った。
せまりくる死の気配に息が詰まりそうになると、娘を連れて病室の外を歩き回った。ホスピスは手入れのされた木々や花で囲まれていた。
死を迎える場で、植物や生き物が今を生きていた。
病室横のラウンジでは、きっと義母が気に入るだろう美しい時計が、時間を刻んでいた。

それから1週間後の2018年6月27日、義母は息を引き取った。

その後、義父は、診断書の整理をしながら「なぜもっと早く癌に気付かなかったのか」と義母の話をすれば泣き、怒った。
何度かホスピスの看護師に会いに行っていたようだ。家族ではない義母の最期を知る人と話をしたかったのではないかと思う。
夫は、自身の母の病気も死も受け入れていないように見えた。
娘は涙を見せることはなかった。

半年ほど経った頃、義父が写真の整理をし始めた。階段下の納戸から段ボール箱に詰め込まれた古いアルバムがいくつも出てきた。
アルバムをめくりながら言った。
「拝み倒して、結婚してもらったんだ」

私も義母の人生をアルバムから辿ってみた。
恋人になり始めた頃の2人の写真に
「YOU AND ME everyday everywhere everytime」と義父が手書きで添えているのを見つけた。

いつ何時もどこにいても一緒だったはずの「あなた」はもういない。
ソファに座る2つの後ろ姿は1つになり、階下からかつて聞こえていた2人の声は、一日中響くテレビの音に変わった。
ふとキッチンを見ると、義母が育てていた蘭が花をつけていた。

長谷川美祈

 

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

長谷川美祈 写真展「YOU AND ME everyday everywhere everytime」
◎会期:2021年6月12日(土)〜 27日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料

◎アーティストトーク
2021年6月12日(土)午後7時~
(会場:定員10名 Facebookライブ配信も同時に行います。)

本展開催に合わせて、アーティストトーク、関連イベントの開催を行います。会場参加には定員を設けさせて頂きますので、ご希望の方はこちらからお申し込みをお願いいたします。
参加申込フォームはこちらです。↓
https://forms.gle/DYJwVKyKR1yyPgbz9
※写真展の入場にはお申し込みは必要ありません。

◎関連イベント:「亡き母を語る」
義母の死を機に、アルバムからその人生を辿り、大切な人の死について考察する長谷川美祈写真展「YOU AND ME everyday everywhere everytime」開催に伴い、母、義母、母のように思っていた方との思い出を語るイベント「亡き母を語る」を開催いたします。
※詳細はこちらをご覧ください。

2021年6月19日(土) 11:00~12:30
(写真展は午後1時から7時までご覧頂けます)
※進行次第で時間の延長の可能性がございます。
参加費 : 無料
定員:10名(先着順)
コロナの感染予防の観点から、10名の定員制とさせて頂きます。
参加申込フォームはこちらです。↓
https://forms.gle/DYJwVKyKR1yyPgbz9

◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
◎問い合わせ:miki.hasegawa@reminders-project.org

助成 | すみだ文化芸術活動助成金

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

©︎Miki Hasegawa / YOU AND ME everyday everywhere everytime

プロフィール
長谷川美祈 Miki Hasegawa
1973年生まれ。昭和女子大学卒。設計士として働いた後写真家として活動を始動。初のアーティストブック「The Path Of Million Pens」は 2014年Unseen Dummy Award (オランダ)ファイナリストに選出され、世界中の写真集関係フェアなどにも選出されるなど評価を得た。2019年日本の児童虐待をテーマにした写真集「Internal Notebook」をCEIBA editions(イタリア)から刊行。Pictures of the Year International(アメリカ)やThe Centro de la Imagen (ペルー)で写真集賞を受賞した。現在も日本における子どもや女性の社会問題をテーマにプロジェクトを継続中である。
https://www.miki-hasegawa.com/