藤元敬二写真展「Forget-me-not」ギャラリートーク開催4/15午前11時から 淳風小学校にて

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

4月12日よりKYOTOGRAPHIEのサテライトイベント·KG+SELECTで写真展「Forget-me-not」が始まる。
キュレーションを担当した後藤由美と作家・藤元敬二によるギャラリートークが15日(月)の午前11時 から展示会場となる淳風小学校で催される。

写真集「Forget-me-not」を元に構成される今回の展示は、ゲイとして育った作家自身の幼い頃からの 写真や絵、そして現在の姿に焦点を当てて繰り広げられる。そこには藤元の捉えた東アフリカのセクシャルマイノリティの友人たちの姿だけでなく、喜びや苦悩に満ちた藤元自身の半生が描き出されている。藤 元にとってゲイであるということは単にセクシュアリティに関わることだけでなく、今までマイノリティとして営んできた「生」のありようそのものなのである。

トークは今回の展示についてはもちろん、二人の作り出した写真集の構成やそのこだわりについてのエピソードなども混じえて繰り広げられる予定だ。

皆さまのご参加をお待ちしております。
なお写真展及びトークに関する情報はFacebookページにて随時されていきます。

日時:2019年4月15日(月曜日)午前11時〜
会場:淳風小学校、京都市下京区大宮通花屋町上ル柿本町609-1
参加費:無料
登壇者:藤元敬二、後藤由美

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

【展示作ステートメント】
僕はあまり感情的なタイプではないと思う。それは僕が同性愛者であり、感情を隠して生きることに慣れすぎてしまっているからだろう。

中学校にいた頃にはゲイであることには気がついていた。もちろん誰にも言えなかった。いつも俗世間から外れた人間だと思っていた。集団行動など大嫌いだった。恋をしてみたかった。好きな人と一緒に手を 繋いで道を歩いたり、当たり前のことをしたかった。それができなかったから、心の中で普通に生きる人間を蔑むことで自分を保っていた。

現実逃避をしたくて旅に出た。英語もできないくせに海外の大学に行くことを決めた。とにかく人と違うことをすることでプライドを保とうとした。二十代後半でカミングアウトをした時、新しい人生が歩めると思った。しかしそれは違った。ただ自分が苦しい胸の内を吐き出し、自己満足しただけのことである。両親は顔にも口にも出さなかったけれど、きっと辛い思いをしていたことだろう。

ゲイであるということは、なにも男が好きなだけのことではない。自分の素直な気持ちを誰にも言えず悶々と過ごすその時間の長さ。その中で何度も自分を見失ってしまいそうになる心と一人ぼっちで向き合い続けるのである。

しかし僕はゲイであってよかったと思っている。もしも不自由のない生活をしていたら聞こえてこなかったであろう音、見えてこなかったであろう色に気がつくことができた。その音や色とともに眺めるこの世は美しい。

そんな当たり前の数々のことに僕はこの年になって初めて気がついた。それは僕が写真集『Forget-me- not』を生むことができたからだ。この写真集と向き合い続けた日々は僕が自分自身と向き合い続けた日々だ。一人の男が広島県福山市に生まれ成長していく。保育園、小学校、中学校、高校を経て東京へ。やがて 現実逃避に旅を始め、アメリカの大学へ。卒業後もネパールやニューヨークで過ごし、写真を撮り始める。 そしてアフリカに暮らす同性愛者たちを撮影するためにケニアへ。

写真集のどこをめくっても出て来るのは僕である。笑う僕。悩む僕。放浪する僕。そんな僕の視点が捉える ケニアやウガンダの友人たち。きっと僕にとっての性とは、ゲイであるということではない。悩み、積み重ね た僕の頭や体に染み付いている僕自身なのだ。それは全人口の5%の事実ではなく、世界75億人中、た た一人の物語なのだ。そのことに気がつかせてくれた写真集『Forget-me-not』は僕の宝物だ。

「この物語はあなた自身の物語。本当にその編集でいいの?」

写真集を編集していた頃、Reminders Photography Strongholdの後藤由美さんは何度も僕に声を かけてくれた。自分が撮影したアフリカの友人たちの姿ではなく、自分自身を物語の中心に据えること。それは故にアフリカに暮らす友人たちへの敬意でもあるのだと。この何度もの励ましがなければ僕は写真集 をまとめることはできなかった。それは言い切れる。

今はただ願っている。この物語が僕の様に社会と自分とのギャップに悩む人たちの手元に渡ることを。堂々と本棚の目立つ場所に置かれていなくてもいい。そっと寄り添う様に、体に近い距離で呼吸を続けてくれることを。

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

登壇者プロフィール:
藤元敬二 1983年生まれ。広島県出身のフリーランス写真家。2017年に発表をした限定版手製写真集『Forget- me-not』の中ではゲイとして育った自身の半生をアフリカに暮らすセクシャルマイノリティーの友人たち の姿と共に描き出す。写真集Forget-me-notはPhotolux Photobook Awardなど様々なフォトブック アワードでショートリストに選出された。現在は東京をベースとして新たなフォトプロジェクトに取り組ん でいる。
http://www.keijifujimoto.net

後藤由美
Reminders Photography Stronghold共同創設者、キュレーター。アジアを拠点に活動するフリーラ ンスのフォトコンサルタント。プロデュース、キュレーション、フォトエディッティング、リサーチなど、写真に 関する総合的なコンサルティングに関わる。重点テーマは、紛争、現代社会問題、人権侵害、女性問題など。World Press Photo(世界報道写真コンテスト)など国際的な写真賞、フォトフェスティバル、イベン トのノミネーション、キュレーション及びプロデュースに多数関わるKYOTOGRAPHIEではポートフォリオレビューのレビュアーを務める。
http://reminders-project.org/

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not

©︎Keiji Fujimoto / Forget-me-not