野村幹太「吉田寮学生寄宿舎史」CESURA PUBLISH版刊行記念展・京都12/3〜12/11、東京12/17-25

RPS京都分室パプロル(会期:12/3-11)、東京のリマインダーズフォトグラフィーストロングホールドギャラリー(会期:12/17-25)では12月に野村幹太写真展「吉田寮学生寄宿舎史・CESURA PUBLISH 出版記念展」を開催します。 野村は2018年にRPSで開催された写真集制作ワークショップ「ATLAS LAB」に参加し、日本で最も古い学生寮である吉田寮の歴史をテーマに制作に取り組み、2020年にアーティストブック「吉田寮学生寄宿舎史」を発表しました。その後同作品はKassel Dummy Book Award(ドイツ)の特別賞やParis Photo-Aperture Foundation Photobook Awards(パリ・ニューヨーク)のショートリストを経て、Andy Rocchelli Grant (イタリア) を受賞。

これは、ウクライナで殺害されたフォトジャーナリスト、Andy Rocchelli 氏の名を冠してCESURAが推進する賞です。このCESURAは国際的写真家集団「マグナム・フォト」の正会員であり、会長を務めた経歴を持つ写真家のアレックス・マヨーリがアンディらとともに設立。このグラントの審査員長もアレックスが務めました。この受賞により「吉田寮学生寄宿舎史」がCESURA PUBLISHからアーティストブックとほぼ同じ内容で出版されることになりました。

本展示では2020年出版のアーティストエディションからどのような編集の変遷を経て、新装版の「吉田寮学生寄宿舎史」が作られたのか、制作の舞台裏をご覧いただける展示となります。

また、RPS特典付きの「吉田寮学生寄宿舎史」(CESURA PUBLISH 版)の取り扱いも予定しており、準備が整い次第ご案内差し上げます。今しばらくお待ち下さい。

野村幹太写真展「吉田寮学生寄宿舎史・CESURA PUBLISH 出版記念展」

【第1会期】会場:京都
◎会期:2022年12月3日(土)〜 11日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
◎オープニングアーティストトーク: 2022年12月3日(土)午後7時~
トークイベント「千本ノックの夜」 第二夜:ダミーブック 12月3日午後8時から

※オンライン配信の予定はございません。アーティストトークをご希望の方は、是非会場にご参加下さい。予約等は不要です。参加費無料
※オープニングレセプション、アーティストトークでの飲食の提供はございません。またトイレの利用が出来ませんので、予めご了承下さい。

※マスクの着用、手洗い、消毒等、感染拡大防止にご協力をお願いいたします。

※会期中他イベントを開催決定する場合がございます。開催の際はSNS等でお知らせいたします。

◎会場:RPS京都分室パプロル
京都市上京区老松町603 または
google mapへのリンクは

https://goo.gl/maps/1V5XyJ4kfuDk91F87
最寄りのバス停:上七軒、または千本今出川
問い合わせ:paperoles@reminders-project.org

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【第2会期】会場:東京
◎会期:2022年12月17日(土)〜 25日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料

◎オープニングアーティストトーク: 2022年12月17日(土)午後7時~

※オンライン配信の予定はございません。アーティストトークをご希望の方は、是非会場にご参加下さい。予約等は不要です。参加費無料
※オープニングレセプション、アーティストトークでの飲食の提供はございません。またトイレの利用が出来ませんので、予めご了承下さい。

※マスクの着用、手洗い、消毒等、感染拡大防止にご協力をお願いいたします。

※会期中他イベントを開催決定する場合がございます。開催の際はSNS等でお知らせいたします。

◎会場:Reminders Photography Stronghold
東京都墨田区東向島2-38-5


吉田寮学生寄宿舎史

これは日本で最も古い学生寮、吉田寮のものがたりである。

吉田寮の前身である京都帝国大学寄宿舎が誕生したのは1897年、今から100年以上前に遡る。吉田寮は長きにわたって学生自ら運営を担ってきた自治寮である。また、芝居や音楽の上演のため、学内外から多くの人が集まり学生文化の醸成する場所でもあった。

近年、大学が建物の老朽化などを理由に、全寮生の退去を求め、寮の存続を求める寮生と対立している。両者の溝は埋まらないいまま、2019年4月、大学は建物の明け渡しを求めて居住する学生らを相手取り提訴するに至った。

この先行きが不透明になっている吉田寮の写真を撮り始めて10年ほどになる。

吉田寮を初めて訪れた時、廃屋のような屋敷の玄関から一歩踏み入ると薄暗がりのなかに脱ぎ捨てられたサンダルや汚れた布団、口の開いた調味料や酒瓶が目に入った。そこには皮脂や汗のような体臭の他に、少し時間がたった食べ物や吸い殻、床や畳に染み込んだ湿気など、ある種独特な匂いが立ちこめていた。建物の至るところに、幾世代にもわたって寮生たちが蓄積してきた多種多様な垢の匂いが確かに刻まれている。訪れるたびにそれらは気配となって密度を増して感じられるようになり、その気配が放つエネルギーに私は強く惹かれていった。

また、この匂いは私自身の学生生活の記憶を鮮明に蘇らせた。当時の怠惰な自分に重ね合わせるところもある反面、私が学生のころに持ちえなかった情熱への羨望、学生時代を完全燃焼できずに終えたという思い…。匂いをもとに彼らの記憶を巡りながら学生生活を追体験してきた10年だったかもしれない。

百年の時を経たこの吉田寮には、ここに集まり、通り過ぎていった無数の寮生たちが残してきた痕跡や記憶がある。それは濃厚に発酵し、強い残り香を今も放っている。

PROFILE | 野村幹太

写真家。京都府生まれ。同志社小劇場の一員として活動の際、吉田寮を知る。のちにビジュアルアーツ専門学校在学中に吉田寮の写真を撮り始める。その後、コマーシャルスタジオでのアシスタントを経て、東京を拠点に作品を製作、発表する。2020年に完成した写真集「吉田寮学生寄宿舎史」は同年、LUMA RENCONTRES HISTORY BOOK AWARD ARLES(フランス)、2021年、Paris Photo-Aperture Foundation Photobook Awards(パリ/ニューヨーク)ショートリスト選出など多数受賞。2021年、CESURA(イタリア)の記念すべき第一回目のANDY ROCCHELLI GRANTを受賞によりCESURA PUBLISHからの普及版刊行に至った。