第18回 グラント受賞写真家 Guillaume Simoneau写真展「MURDER」開催 9/7〜9/18まで

この度、第18回Reminders Photography Strongholdグラントを受賞したギヨーム・シモノー「MURDER」の写真展を開催いたします。2018年6月に申し込みが締め切られた第18回RPSグラントにて2名の受賞が決定しました。 Fabian Muirのプロポーザル「Intimate Perspectives on North Korea」と Guillaume Simoneauのプロポーザル「MURDER」 です。
審査員は、ペギー・スー・アミソン、マリー・レリーヴル、トゥーン・ファン・デル・ハイデン、エリック・ブルーン、エメリン・ヤング、アンドレイ・ポリカノフ、ディーン・チャプマンの7名です。
本展会期中には作家本人も来日し、展示作品も含まれている写真集の販売も予定されております。
是非、期間中にお越し下さい。

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

「MURDER」は、地震の被害を受けた佐賀、および金沢の山地で2016年と2017年の春に製作された、カナダ人写真家ギヨーム・シモノーによる最新シリーズだ。外部へ、大自然へと視線を向けた作品「Experimental Lake 」(Mack、2018年)の出版の後、シモノーは今、自身の本「Love and War」(Dewi Lewis、2013年)から出現した高ぶる感情を思い起こさせる、さらにパーソナルで親密な物語を選んだ。
 
「これは応えとしてのシリーズだ。私の母、ジャンヌ・ダルク・フォルミエールとの時を超えた対話、そして日本人写真家、深瀬昌久(1934〜2012)の有名な「鴉」へ対する強いオマージュである。」
 
シモノーが4歳のころ、彼の父が誤ってカラスのヒナのいる巣のある木を切り倒してしまった。シモノーはこの出来事の細部までは思い出せないが、50mほど先に墜ちてきたヒナたちの悲しげな鳴き声をかすかに記憶している。それは1982年の春だったが、シモノーの父は、家族がこの4羽の、どこか意地悪でいたずら好きなカラスのヒナの里親になるとはっきりと決断した。その時、写真家の母ジャンヌ・ダルクはセコールのレンズの付いたマミヤのカメラで、この新たに結ばれた実験的な関係を、誠実にそして親密に記録するようになった。このシリーズの印象的なイメージが、約35年の後にシモノーを極めてユニークな対話を発展させるように駆り立てた。
 
1980年台初頭の同じ頃、太平洋の反対側では深瀬昌久が写真集「鴉」を製作していた。主に北海道と金沢で撮影された、この暗さを持った戦後の傑作は、今でも日本の出版史に残るものだ。2010年、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィーと写真分野の世界的権威であるゲリー・バジャーは、この写真集を「過去25年間における最高の写真集」とした。次いで1986年には、ナン・ゴールディンの「性的依存のバラード」としてよく知られるもう1冊の本が出版された。
 
アン・ウィルクス・タッカーはそのエッセー「Why so Personal?」(沈む太陽〜日本人写真家による文〜、アパチャー、2006年)において、「記憶、追悼、ノスタルジアは、写真への刺激として繰り返し使われている。しかし、何が、そして何のために追悼されているのだろう?」と述べている。シモノーの作品「MURDER」では、暴力的かつモダンな手法で偉大な日本の写真家を讃えている。これと同じ暴力が、彼の母の撮った静かで優しい写真と対比される。母の撮った写真は、本能で撮影されたどこかロマンティックな、シモノーの子供時代と過去、両方のビジョンを暗示している。シモノーの作品の中のこのような対立と緊張の偏在は、強さと弱さの独特ではかない共存において、力と脆弱性が同時に存在することに対して彼が焦点を置いているという事実によるものだ。荘厳さ、恐怖、配慮、怠慢、若さ、老齢、優しさ、暴力、昼、夜、生、そして死。この層は厚く、提示されているものは複雑である。
 
結論は見る者がどれだけ現実を受け止めようとしているかを試している。一度集められ、物語の断片をいう形を取った作品は、私達の住む世界の非常な複雑さを反映している。作品は、視点が事実よりも、私見が真実よりも重きを置かれるような、入り組んだ物語として語られる。

◎会期:2019年9月7日(土)〜9月18日(水)
午後1時〜午後7時(会期中無休)
※初日の9月7日のみ午後6時からのオープンとなりますのでご注意下さい。

◎オープニングレセプションおよびアーティストトーク:9月7日(土)午後6時から
◎会場 Reminders Photography Strongholdギャラリー
東京都墨田区東向島2-38-5
◎入場料無料

◉書籍販売:
MACK より刊行のギーム・シモノー新作写真集「MUDER」および「EXPERIMENTAL LAKE」の販売を予定しております。
詳細は決定次第HPおよびSNS等で告知いたします。

助成:すみだ文化芸術活動助成金

RPSグラントについて
RPS に企画展を提案して頂き、 RPS 審査委員会の審査を通過された方に、RPS ギャラリースペースを5 日以上(最高20 日まで) 無償でご利用いただけます。
対象: 写真家、キュレーター、ギャラリスト、ほか。

写真展の情報については随時Facebookにて更新しておりますのでこちらをご覧ください。

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

©︎Guillaume Simoneau / MURDER / the 18th RPS grantee

ギヨーム・シモノー(カナダ)は、純粋応用化学の学位を取得後に独自に写真を学ぶようになった。シモノーの最初のメジャーな作品である「Love and War」はシカゴ現代写真美術館にて展示され、Dewi Lewis(英国)から出版された。この写真集は、ファースト・ブック賞とヨーロピアン・パブリッシャー・フォー・フォトグラフィー賞にノミネートされた。彼の最近のシリーズである「Experimental Lake」は2018年にMACK(英国)から出版された2冊目の写真集で、作品はカナダのStephen Bulger ギャラリーで展示された。シモノーは2018年度のLight Workのレジデンシー招待作家である。
シモノーの作品集「MURDER」はMACK(英国)より2019年春に出版予定。
http://www.simoneauguillaume.com

日本語訳文責:奥山美由紀