4/15 7PM:ビジュアルストーリーテラーとの夕べ:写真賞受賞者、陳川端と松村和彦を迎えて
※開催地はRPS京都分室パプロルです!
RPS京都分室パプロルにて、陳川端と松村和彦を迎えて、二人がそれぞれ写真表現において重要な賞を受賞したことを称え、二人を囲み、受賞した作品について語りながら過ごす夕べを企画しました。
今回RPS京都分室キュレーターを務める後藤由美が三影堂写真賞に審査員の一人として参加させていただきました。陳川端が見事受賞し、授賞式で後藤は彼の作品について以下のように言及しました。「獲得した技術や経験の成果を単に見せるだけの作品には興味がありませんが、そこに人類が忘れてはならない事実や見過ごしてはいけない現実、心得て置かなければならない教訓が暗示され、そのことを気づかせる仕掛けが結果的に備わっていたとしたら、そのために必要な表現であれば、それが何よりも説得力を持って作品として存在するのであれば、歴史的に残っていくべき作品を作った功績として称えられるべきです」
また、RPS京都分室立ち上げ当時から分室長を担う松村和彦が今年の世界報道写真コンテストのオープンフォーマット部門でアジアの地域優勝者に選ばれました。審査員は彼の作品について、「日本の認知症に独自の視点を映し出す際の慎重な選択に深く感銘を受けました。その品位ある描写と文化的視点の見事な融合が、プロジェクト全体に流れるような一貫したスタイルを生み出しています。各概念的な決断は、美的要素に留まらず、視覚的な言葉やムード、そして日本の文化と写真の伝統に根ざした象徴を巧みに取り入れ、ストーリーを効果的に表現しています」
二人の共通点としては、従来の「写真表現」の枠を超えたオープンフォーマットで、独自な視点や解釈をもとに比喩的なイメージが持つ力や事実や証言を基にイメージを形成し、そして「ビジュアルストーリーテリング」を通じて伝えるという表現方法が挙げられます。
新たな写真表現について、その必要性やそれが評価された点について、それぞれの作品を見ながら、有意義なディスカッションの時間をみなさんと過ごせたらと思っています。
尚、当日、陳川端が自主制作した写真集『Belly of The Giant Serpent』を限定部数持参し販売も予定しています。また、松村和彦が昨春のKYOTOGRAPHIEの際に制作した写真新聞「心の糸」もお持ち帰りいただけるように準備いたします。
日時: 2024年4月15日(月)19時から
会場: RPS京都分室パプロル
京都市上京区老松町603
最寄りのバス停:上七軒、または千本今出川
問い合わせ先: paperoles@reminders-project.org
ゲスト:
陳川端(2024年度三影堂写真賞受賞作家)
松村和彦(世界報道写真コンテスト2024 オープンフォーマット部門 アジア地域優勝者)
司会進行: 後藤由美(RPS京都分室パプロルキュレーター)
※当日会場では藤井ヨシカツ写真展「凪」を開催しています。
※当日の進行上、中国→日本語の通訳をボランティアでお手伝いいただける方を募集しています。お心当たりのある方は上記メールまでご連絡ください。
◯陳川端(2024年度三影堂写真賞受賞作家)
作品ステートメント:
巨大な蛇の腹の中
このコレクションは、私の旅の間の予期せぬ旅路を記録したもので、最後の冬の日々を過ごした場所、ノーグリスタウンという場所でのものだ。
ダルトン夫妻には3人の子供がいて、私が滞在中に彼らが私を受け入れてくれた。しかし、私の興味を引いたのは、夕食前の奇妙な祈りだった。木々や作物、すべての動物に感謝を表した後、人々は次のようなフレーズで終えるのだ。「世界は巨大な蛇の腹の中にある」
引退した教師のパトリックが、町の歴史について話してくれた。1990年代、ノーグリスに隕石が落ち、蛇のような鱗を持っていた。それに触れた子供たちは病気や危険から守られると言われ、その存在の中で避難所を見つけた。パトリックは、宇宙の起源が似たようなパターンに従ったと強く信じている。ちりが蛇の形に凝縮され、それから巻き付いて惑星を形成し、生命や文明を生み出したというのだ。
春が到来する前に司祭が儀式を行い、その間、超自然現象が私の記憶の境界をぼやけさせた。それには、窓の外で不明瞭な顔を見たり、強烈な身体的な痛みを経験したり、頭からつま先まで鱗に覆われている夢を見たりすることが含まれていた。
私にはもはやノーグリスに戻る機会はないかもしれない、あるいはノーグリスは存在しないかもしれない。巨大な蛇の腹の中には消化液がある。ある期間、私は世界が疑問の余地のない壁の中に閉じ込められ、浸かっているのを見るのだ。
作家プロフィール:
陳川端(1994年生まれ)は、起業家精神とイノベーション教育、自然教育、バイオフィリア&トポフィリアに関する学問に焦点を当てている。写真や図表を使い、人間と自然の関係や現代生活の課題を探求している。彼は自然科学と超自然現象に興味を持ち、特に想像力に魅了されている。
彼は「Restrained Orders」「Belly of The Giant Serpent」「Adventures」「Like Run Come Run Go」「Restorative Topophilia」という写真集を独自に出版している。また、「TOP20・2019 新興現代中国写真家」「TSPA・2024 三影堂写真賞」に選ばれたこともある。個展も多数開催し、その中には「Voice in the Wilderness」「Rootless Hymn」「This Land Heals Me」「Restrained Orders」などが含まれている。
◯松村和彦(世界報道写真コンテスト2024 オープンフォーマット部門 アジア地域優勝者)
作品ステートメント:
心の糸
誰もが自分や身近な人が認知症になる時代を迎えている。
日本では2025年に認知症の高齢者が約700万人になると予測されている。
だが、私は認知症について学んだことだけを伝えたいわけではない。
認知症から学んだことも伝えたい。
それは、
社会への警鐘だった。
心を繋ぐ糸だった。
言葉を使わない対話だった。
生と死のあわいにも、かりそめにも、瞬きにも、輝きがあった。
私たちは何を幸せと感じるのか?
何を不幸せと感じるのか?
私たちの社会は何を幸せと認め、何を不幸せとみなすのか?
私たちは何を幸せと感じる社会をつくるべきなのか?
作家プロフィール:
1980年生まれ。2003年、記者として京都新聞社に入社。05年写真記者となる。「人生」「社会保障」「ケア」をテーマに作品制作に取り組む。認知症を長期取材しており、新聞連載や雑誌で記事を掲載するほか、2022年にKG+SELECTで写真展「心の糸」を開催。グランプリに選ばれ、2023年春にKYOTOGRAPHIEで同名の展示を開催した。写真集に京都の芸舞妓の人生を描いた「花也」(14年、京都新聞出版センター)と、個人的な作品として取り組み、家族の生と死を通じて命のつながりを描いた「ぐるぐる」(16年、自主制作)がある。前作「見えない虹」は、医師の早川一光さんの人生を通じて日本の社会保障史をたどった。2019年春にKG+で写真展を開催。写真新世紀2021年度で佳作を受賞した。