COVID-19パンデミック企画展公募ファイナリストによるグループ展 10/17~25まで

トップイメージデザイン:渡部周

2020年上半期に起きたコロナ禍は、まさに「時代の節目」を象徴するような出来事になりました。それは、人々に多くの困難をもたらし、目に見えない脅威を恐れ、行き場のない不安に圧迫されて生活することを強いています。

3、4ヶ月で大きく変容した社会の中で、自分自身の立ち位置や、これからの人生設計などをこれまでになく思案される方も少なくないと思います。

Reminders Photography Strongholdではギャラリーオープン後初めて企画展やワークショップ開催延期等を経験しました。世界中でもウイルス感染拡大の防止対策としてギャラリーや美術館が軒並みクローズ、恒例となっていたフォトフェスティバルはキャンセルや延期を余儀なくされ、作品制作、発表を予定されていた方々にとっては二の足を踏まざるを得ない状況だったかと思います。

そんな状況の中、私たちにできることは何なのかを考えました。そして、「COVID-19パンデミック」をテーマに作品作りに取り組む、個人またはグループ(団体)を対象とした企画展公募を行う運びとなりました。こうして生まれたのが、緊急公募企画「COVID-19パンデミック」です。

この度、ファイナリストに選ばれた杉浦修治さん、松下律子さん、魏子涵さんの3名が2020年10月17日~25日まで展示を行うことになりました。会期初日にはイベントの開催も予定しています。皆様のご来場をお待ちしております。

なお、本公募企画で最優秀作品となった、王露さんの作品「いまここ、いまあそこ」は2020年9月12日~22日まで、Reminders Photography Strongholdで個展を開催しました


COVID-19パンデミック企画展公募ファイナリストによるグループ展

◎会期:2020年10月17日(土)~ 25日(日)
13:00~19:00 会期中無休、入場無料
◎Facebookライブ配信アーティストトーク
2020年10月17日(土)午後7時~
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
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◉松下律子 / 空を仰ぎ、彼らを見送る

©️松下律子 / 空を仰ぎ、彼らを見送る。

ステイトメント
「風邪と同じだし。治るし。」という人が多くいる。
しかし、悪化して亡くなる人もいる。

全世界での1日の死者数、自殺者数、他の病気による死者数と比較して、「大した数値じゃない」という人も多くいる。

しかし、今年のはじめまでは誰も気に留めていなかった未知のウィルスによって、治療法や治療薬がなく、近しい人にそばにいてもらえることもなく死んでくというのは、どんなにか心細く、悲しく、悔しいことかと思う。

数字で見ると数字でしかない。その数字はひとつひとつ、命であり、名前があり、家族があり、生活があることを想像してほしい。軽率な行動は取れなくなるはずだ。

旅行会社に勤める私は、出勤が停止された。そのため毎日コンパクトカメラだけを持って近所を散歩する。そして、空を見上げて撮影をする。今日、COVID- 19によって空へ、宇宙へ還っていく命を思いながら。帰宅したら撮影した空の写真を印刷し、その空に命をひとつひとつ、写経をするように描く。

プロフィール

神奈川県横浜市生まれ。神奈川県横浜市在住。小さな旅行会社で働きながら写真アーティストとして活動中。子供の頃に読んだ絵本やファンタジーの世界、そして、東洋思想の一つである「禅」の考え方に影響を受けている。すべての物質には実体がなく、流動的な状態のほんの一時の姿であり、常に変化していく。「それ」はいつから「それ」であり、いつまで「それ」であり続けるのか?この思考を主軸に作品制作をしている。主な受賞歴 SONY World Photography Awards 2020 Professional Competition “Creative” Shortlist 写真新世紀2019 佳作
HP : https://www.maturi-co.maturyu.com/

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◉杉浦 修治 / dissociation

©️杉浦 修治 / dissociation

ステイトメント

2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、日本政府は緊急事態宣言を発令した。YouTubeにはコロナ関連の動画が溢れ、コメント欄からは人々の混乱が見て取れた。様々なヘイトや、コメント同士のいがみ合い、根拠のない情報の蔓延。しかし一歩外に出れば、そこにはいつにも増して静かな街の姿があった。外にはヘイトを叫ぶ者も、いがみ合っている者もいない。皆穏やかに散歩をしている。現実とインターネット上での人々の感情の落差に違和感を覚えた。人間は普段理性によって抑圧されているが、インターネットというバーチャルな空間において、その力は急速に弱まる。インターネット上にはもう一つの身体(ここでは仮に電脳体と呼ぶ)が存在している。そして電脳体は、現実の身体とは異なる理性のもとに行動を行う。インターネットの登場による人間の身体の解離は興味深いが、他方で不気味なものでもある。そしてこの現象は、インターネットをやめて現実と向き合えば解決できる、というタイプの単純な問題ではない。電脳体はすでに私たちの身体の、そして社会の重要なファクターになっている。

プロフィール

1992年、千葉県市川市生まれ。2016年より東京を拠点に写真作家として活動を始める。主な個展にsediments(2019, TAP Gallery, 東京)、グループ展にNEXT PROJECT EXHIBITION(2019, 東川国際写真祭, 北海道)など。写真を詩的な表現に用いる文脈よりも、写真をある種のシステムとして、ソリッドな表現に利用する文脈に共感を覚える。自作においては写真を重ねること、もしくは大量に並べることによって、写真(もしくは写真という総合的な行為)それ自体の脱構築を試みる。

 

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◉魏 子涵 WEI ZIHAN / 呼吸の響き

©️魏 子涵 WEI ZIHAN / 呼吸の響き

ステイトメント
動物園で12匹の猿が行方不明になった。1匹でも2匹でもなく、12匹だった。猿は盗まれたのか? 檻に壊れた跡もない、不審な人物はいない。 管理者は、猿山の裏側に大きな穴が開いていることには気づいた。 もしかして逃げられたのか? 水と食べ物は十分あるし、日当たりもいい。動物園より快適な場所はないはずだ。 なぜ猿たちは行方不明になったのだろうか。 

コロナは動物を介してヒトに感染したものと考えられ、たくさんの動物園が閉鎖された。 本シリーズは、実際に起きた事件に基づき制作した撮影小説だ。

プロフィール

1994年、中国に生まれ。 武蔵 美術大学大学院,写真コース卒業。 卒業後東京を拠点に写真家として活動を始める。作品は主に人と人の距離感、人と異空間の繋がり方、人と周りの物事の関係性をテーマに制作。国内外のギャラリー、美術館で展示を行う。2019年第21回写真「1_WALL」ファイナリスト選 出、第2回「SHINES 写真家オーディション」を受賞。第2回「SHINES 写真家オーデイション」 を受賞。また2019年「清里フォトアートミュージアム」コレクション。