吉田亮人写真展「The Dialogue of Two Three Books出版記念展」1/11-19
Reminders Photography Strongholdでは、2025年1月に吉田亮人の写真展「The Dialogue of Two Three Books出版記念展」を開催いたします。
2014年 突然の自死によって23歳でこの世を去った大輝。 本作「The Dialogue of Two」は写真家・吉田亮人のいとこである大輝がいなくなった後、大輝 と共に暮らしていた祖母が亡くなるまでの約3年間を追った物語です。 最愛の人間を失った者が死者とどのように向き合い、対話しながら生きていったのかを、吉田の祖母が生前何度も語って聞かせた「ある話」を軸に編まれています。
この物語の前日譚である「The Absence of Two」はReminders Photography Stronghold (RPS)の写真集制作ワークショップ「Photobook as Object」で限定111部の手製本として制作され、祖母と大輝の日常とそれが終わりを迎えるまでを描いた物語です。2017年の KYOTOGRAPHIE国際写真フェスティバルで発表され、国内外で大きな話題となりました。本作「The Dialogue of Two」は2022年にRPSキュレーター後藤由美とともに限定49部のアーティストエディションとして制作・刊行され、Image Vevey Award2023/24(スイス)や第47回木村伊兵衛写真賞(日本)の最終選考に選ばれ、瞬く間に完売しました。
そして、この度Three Booksから装いを新たに、2025年1月に刊行されることになりました。
本展示では、写真集を制作していく際に作ったモックアップや編集の過程、印刷の刷りだしなど、写真集の制作プロセスを辿っていくと同時に、限定49部のアーティストエディション版のダミーブックなどを展示いたします。ぜひご期待ください。
The Dialogue of Two
九州は宮崎県国富町。
この小さな田舎町に当時83歳になる私の祖母と23歳になるいとこの大輝が共に生きていました。
大輝は幼少時より祖母と同じ家、同じ部屋で暮らし、大切に育てられてきました。青年へと成長してからも祖母と離れることなく、2人の暮らしは続きました。
そんな2人の小さな日常を私は家族として、写真家として描写し続けました。
そしてこのストーリーは、そう遠くない将来訪れるであろう祖母の死をもって終わりを迎えるはずでした。しかし、それはある日突然、本当に何の前触れもなくやってきたのでした。大輝はその生涯を自ら閉じたのです。23歳でした。
彼のあまりにも早すぎる死を前に私たちに残ったのは、言いようのない悲しみと悔恨の思いでした。
しかし、本当の悲しみは、最愛の孫を失い、一人残された祖母を見た時でした。「もう生きてる意味なんかねえ。はよ、向こうに行きてえ」
毎日のようにそう呟く祖母の喪失感と絶望感は筆舌に尽くし難いものだったに違いありません。私はその姿にカメラを向けて、悲しみを打ち払うようにシャッターを切り続けることしかできませんでした。そんな祖母が窓辺に立ちすくんで、ぼうっと外を眺めていることが多くなってきたのはいつ頃からだったでしょう。
同時に私に何度も語って聞かせることになる「ある話」が出てきたのもこの頃でした。
それは「大輝が昨晩帰ってきた」というものでした。まるで本当にあった出来事のように、その経緯を詳細まで語り、最後に必ず「夢じゃない。大輝はここに帰ってきた。確かにここに」と言って終わるこの話を私は何度聞いたことでしょう。その度に私の胸中は言葉にできない複雑な想いでいっぱいになるのでした。
そうやって大輝が不在となってから約2年半後の2016年11月18日。祖母は88年の生涯を静かに閉じました。
最愛の人間を失ってからもその存在を誰よりも側に感じ続けた祖母。その悲しみの深さと、祖母と大輝双方に流れる愛の深さを、手元に残された幾葉もの写真を手繰り寄せ、紡いでみようと思います。
吉田亮人
吉田亮人写真展「The Dialogue of Two Three Books出版記念展」
◎会期:2025年1月11日(土)〜 19日(日)
13:00〜19:00
会期中無休、入場無料
◎オープニングレセプション / アーティストトーク
2025年1月11日(土)14時ごろから
※オープニング+アーティストトークは14時からですのでご注意ください。
展示は13時からご覧いただけます。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
※この他、期間中にトークイベントなどを開催する可能性があります。
随時詳細が決定次第お知らせしますので、SNS等で最新情報をご確認ください。
吉田亮人|プロフィール
1980年宮崎県生まれ。京都市在住。滋賀大学教育学部卒業後、タイで日本語教師として1年間勤務。帰国後小学校教員として6年間勤務し退職。2010年より写真家として活動開始。
個人的な出来事や問題、記憶から出発した作品を多数制作。その作品は国内外で展覧会が開催されるとともに、多くの出版物が刊行されている。
2023年に写真集出版社「Three Books」を鈴木萌と設立し共同代表を務める。
主な出版物に「Brick Yard」(私家版)「Tannery」(私家版)、「THE ABSENCE OF TWO」(青幻舎・Editions Xavier Barral)「The Dialogue of Two」(Three Books/RPS)「The Screw」(Three Books)、写真絵本「はたらく」シリーズ(創元社)、写真家としての10年間を綴った書籍「「しゃにむに写真家」(亜紀書房)などがある。
第47回木村伊兵衛賞2023最終候補、Images Vevey Book Award 2023ノミネート、Paris Photo Aperture First Book Award 2015ノミネート、コニカミノルタ・FOTOPREMIO2014年度グランプリ、日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015・ピープル部門最優秀賞など受賞やノミネート多数。
http://www.akihito-yoshida.com