後藤友里写真展「love knot」7/26 – 8/3

07/13/2025

2025年7月の企画展として、後藤友里による写真展「love knot」を開催いたします。

2020年、未曾有のコロナ禍によって人と人が会えない生活が始まりました。 本作「love knot」は、後藤友里が孤独を埋めるためにマッチングアプリを始めた恋物語です。

マッチングアプリのユーザー数は年々増加し、今や出会いの主流となっています。
年齢・身長・体型・職業・年収・学歴・性格・恋愛観など、さまざまな条件を設定して検索をかけ、好みの相手を選んでいく――そんな効率と可能性を追求したマッチングアプリの世界では、ユーザー同士が非人格的なデータとして扱われがちです。
まるでネットショッピングの商品リストのように、誰もが容易に代替可能な存在として並ぶなかで、いかにして「かけがえのない存在」と出会い、絆を結ぶことができるのか。
本作は、“現代的な出会いの在り方”を作家自身の実体験から探ったものです。

この展示にあわせて、9冊のスマートフォン型アーティストブックを収めた写真集が刊行されます。
作家はアプリ上で200人とマッチングし、そのうちの9人と連絡先を交換しました。
各冊子には、X（旧Twitter）の鍵アカウントに綴られたそれぞれの相手との恋愛模様の呟きと、それを象徴するイメージが収められています。
スマートフォンの画面をスワイプするようにページを左右にめくる形式で構成されており、読者は彼女の体験を疑似的に追体験することができます。
なお本写真集は、彼女がマッチした人数と同数の200部限定エディションとして刊行されます。

本作の制作は、2022年、Reminders Photography Stronghold（RPS）の実験的ワークショップ「イメージの再構築と比喩的表現」から始まりました。同年、Koma galleryでの個展「pop ropes」、2023年のKG+SELECTファイナリスト展での発表を経て、RPSキュレーター後藤由美のメンターシップのもと、作品をさらに発展させてきました。
今回、新たなタイトル「love knot」のもと、すべてのイメージとテキストが一新されています。

“love knot”―恋結び。リボンなどを蝶結びにすること。その形が無限大（∞）の記号にも似ていることから、「永遠の絆」を意味します。
「マッチングアプリで出会った彼との恋が、どうか永遠に続いてほしい」という願いと、「もし終わりが来れば、また新たな出会いを探してアプリに戻る、というループを繰り返すのかもしれない」——そんな相反する想いが重なり合うタイトルです。

会場では、アーティストブックとは異なる展示構成によって、作品世界をより立体的にご体感いただけます。
この恋物語を、心ゆくまで味わってみてください。

後藤友里アーティストブック『love knot』ご注文受付中！

©︎Yuri Goto / love knot

「love knot」

人に会えない生活の寂しさから、マッチングアプリを始めた。
アプリを開くのは決まって眠れない夜だった。
この孤独を埋めてくれる誰かを探していた。
スマホの画面上に写真付きのプロフィールがランダムに現れる。
NOとLIKE、気まぐれに左右へ指を弾いていると誰かとマッチングした。
その誰かが私のプロフィールを見て、同じようにスワイプしたことがわかる。
それだけで眠ることができる夜があった。
200人の男性とマッチングしたうち9人とLINEを交換した。
これは私が経験したかもしれない恋の話だ。
運命の人を夢見て、私はメッセージを送る。