RPS京都分室パプロル:𠮷田多麻希・松村和彦 共同展「閾 ─ 揺らぎの像」 4/18-5/10

RPS京都分室パプロルでは、2026年度企画展として𠮷田多麻希・松村和彦による「閾 ─ 揺らぎの像」を、4月18日から5月10日まで開催いたします。本展は、これまでRPSのワークショップやメンターシップを通じて写真表現を深めてきた二人が一つの空間で交差し、それぞれの歩みと現在のまなざしを持ち寄りながら、個々の表現の枠を超えて共鳴と対話を試みる場です。
本展では、完成された像や単一の解釈を提示するのではなく、像を構成する断片や層(レイヤー)を抽出し、再構成するという表現に取り組みます。新作インスタレーションを通して、作者・作品・観客の関係が更新され、「見ること/理解すること」の前提そのものが揺さぶられていきます。
異なるテーマや被写体を探究してきた二人ですが、ここでは「私たちが本当に見て、意識すべきこと」を静かに問いかけます。単なる比較や並置にとどまらず、個々の実践が交錯することで、現代社会の中で曖昧にされがちな「境界」や「閾」にあらためて光を当て、新たな視点をもたらす共同展です。


◎写真展情報

タイトル|閾 ─ 揺らぎの像
作家|𠮷田多麻希、松村和彦
キュレーター|後藤由美
会場|RPS京都分室パプロル(京都市上京区老松町603)
最寄りのバス停|上七軒、または千本今出川
会期|2026年4月18日(土)- 5月10日(日)
休廊日|なし
開場時間|13:00 – 19:00
入場料|無料
問い合わせ|paperoles@reminders-project.org
公式Instagram|@remindersphotographystronghold


オープニングレセプション/関連イベント

オープニングレセプション/アーティストトーク
 2026年4月18日(土)19:00〜

ゲストトーク
 2026年5月(日時未定)
 「像の条件──見ること/わかることの境界」
 登壇:仲西祐介(KYOTOGRAPHIE共同代表)、松村和彦、𠮷田多麻希
 進行:後藤由美
追加イベントの情報は、決定次第ウェブサイトおよびSNSにて随時更新いたします。


キュレーターズ・ステートメント

本展「閾 ─ 揺らぎの像」は、𠮷田多麻希と松村和彦、異なる領域を探究してきた二人による表現的な対話である。𠮷田は野生動物と人間社会の境界や、生命と死のあわいに漂う痕跡や気配に向き合い、松村は認知症やそれを取り巻く家族や人々の歴史、そこから生まれる関係や繋がり、さらに現在は「看取り」についても取材を続けている。それぞれ異なるテーマに取り組む二人が、知覚と現実、思い込みと感覚、その境界に現れる“揺らぎ”の余韻を主題に据え、像を構成する断片や層を抽出し、観客が再構成するという表現方法に挑む。本展はまた、異なる時間や場所で蓄積された視線や経験の集積が、空間上で呼応する場でもある。“閾”を前にしたとき、像は完成を拒み続ける。私たちは“ゆらぎない完璧な像”に到達できるのか、それ自体が叶わぬ希求なのか。その問いこそが、私たちが知っているつもりで実は知らない領域――すなわち、“閾”の向こう側——として、空間に可視化されることになる。

後藤由美(RPS京都分室パプロル)


アーティストプロフィール


𠮷田 多麻希

𠮷田多麻希は、野生生物や自然という鏡を通して、そこに投影される人間の存在と営みを見つめている。創作の主眼は、自然界の美しさを記録することにとどまらない。他生物との関わりのなかに、人間の生、思考、感情がいかに映し出されているかを観察し、その関係性の断片から、現代社会の構造や人間存在の本質を問い直す。環境問題を遠く離れた客観的な事象として扱うのではなく、私たちの日常に潜み、見過ごされがちな「微細な繋がり」へと焦点を当てる試みでもある。近年は、生活排水を用いたフィルム現像により日常と害獣問題の地続きな関係を表現した作品、ダゲレオタイプで事故死した生き物を原寸大に定着させたロードキル問題をめぐる作品、土地の素材を漉き込んだ和紙を用いて地域の記憶や歴史の継承を試みるプロジェクトなどを展開してきた。KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭メインプログラム、アルル国際写真祭アソシエイトプログラム等で作品を発表。デジタル/フィルム、実験的・古典的印画技法を含む多様な手法を、コンセプトに応じて選択し、人間と自然が織りなす視覚的な物語を紡いでいる。それらは悲劇の記録に留まらず、人間の無意識の行動や思考の型を浮き彫りにしながら、人と自然の間に「新たな均衡」を見出す可能性を探り続ける。


松村 和彦

1980年、兵庫県姫路市生まれ。2003年、記者として京都新聞社に入社し、2005年より写真記者。以来、「人生」「社会保障」「ケア」を主題に長期取材を継続する。認知症取材では新聞連載や雑誌掲載を重ね、2022年にKG+SELECTで写真展「心の糸」を開催、グランプリを受賞。翌2023年春、KYOTOGRAPHIEで同名展示を発表した。2024年には「World Press Photo(世界報道写真コンテスト)」のオープンフォーマット部門でアジア地域優勝者となる。
また、2021年以降日本開催が途絶えていたコンテスト入賞作の世界巡回展誘致に尽力し、2024年冬、京都新聞ビル地下1階の印刷工場跡にて「世界報道写真展2024京都」を実現させた。写真集に、京都の芸舞妓の人生を描いた「花也」(2014年、京都新聞出版センター)、家族の生と死を通して命のつながりを描いた自主制作「ぐるぐる」(2016年)など。医師・早川一光の人生から日本の社会保障史をたどった「見えない虹」は、2019年春にKG+で個展を開催。写真新世紀2021年度で佳作を受賞。


𠮷田多麻希 / 閾 ─ 揺らぎの像


松村和彦 / 閾 ─ 揺らぎの像