藤井ヨシカツアーティストブック 『突撃アト五指に足らず』 ご注文受付中!
藤井ヨシカツのアーティストブック『出撃アト五指に足らず』のご注文受付を開始いたします。
本作は、2024年4月にRPS京都パブロルで開催された写真展「凪」と、同作の写真集刊行を経て、
その物語のさらに深部へと踏み込むべく制作された作品です。
前作『凪』で提示された “見えない記憶の気配” は、本作『出撃アト五指に足らず』において、より根源的な問いへと迫っていきます。
幼い頃に祖父から聞いた戦争の記憶——その中でふと語られた特攻兵器「回天」という言葉。
それは家族史の奥底に沈む小さな断片でありながら、戦争の影がどのように個人の内側へ流れ込み、語られないまま残されてきたのかを象徴する存在でもあります。
本作では、その断片や資料、証言を静かに手繰り寄せながら、これまで触れられることのなかった物語の核心へと向かっていきます。
本書は、日本が真珠湾攻撃を行い、開戦へと踏み出した12月8日に合わせて販売を開始します。
尚、12月11日から14日に開催される東京アートブックフェアでは、本作の現物を初めてご覧いただけます。
さらに、12月20日から28日まで同タイトルの写真展を開催し、本書で掬い上げられた断片と物語の層を空間の中で立ち上げます。
「出撃アト五指に足らず」
子どもの頃、祖父から聞いた戦争の話 ―
「じいちゃんは原爆には遭うとらん。呉におったけえの。海軍よ。人間魚雷も作っとった。そりゃあ何を作りよるんか誰も教えちゃくれんが、設計図を見りゃあ何を作りよったか分かるわい。」
てっきり祖父は戦地に行ったか、あるいは原爆に遭ったのだろうと想像していたので、その答えには拍子抜けした。そしてむしろ、「海軍におった」と少し誇らしげに語る祖父の姿が、鮮明に記憶に焼き付いている。
実際のところ、祖父が人間魚雷「回天」の製造に関わっていた証拠はどこにもない。家族の誰も、そのような話を聞いたことはないという。ただ、祖父自身の口から「作っていた」と語られた記憶が私の中に残るだけだ。
お国のために命を捧げることが美徳とされた時代。権力者の思想と当時の社会の空気の中で、「特攻兵器」という恐ろしいものが生まれ、多くの若者の命が奪われた。
しかし戦後、私たちはその死を「尊い犠牲」として語り継ぐことが多く、そのまま正当化してしまう語り口に違和感を覚える。まずは、なぜそんな犠牲が生まれたのか、その原因を徹底的に見つめ直すことが欠かせない。戦争を放棄した現代の日本では当時の価値観は想像しにくいが、私はその原因を知り、問い続けたいと強く思う。
記録をたどる中で、特攻兵士たちが整列し満面の笑みを浮かべた集合写真を見つけた。その表情の意外さに驚かされる。さらに、特攻隊員は強制ではなく志願制だったことも知った。しかしそれは「名目上の自由」に過ぎず、見えない圧力の下で志願せざるを得なかった者も少なくないだろう。彼らの笑顔の裏にあったであろう本当の感情を思うと、戦慄を覚える。
一方で、祖父はその恐ろしい兵器をつくる側にいたかもしれない。彼は何を思い、どんな覚悟で手を動かしていたのか。ただ命じられるまま働いていただけなのかもしれないし、戦争の渦中にあった社会では、人が死ぬことの重大さが今ほど実感されていなかったのかもしれない。それでも、なぜ祖父は家族の誰にも語らず、幼い私にだけ話してくれたのか。祖父が亡くなった今では、もう確かめることはできない。
祖父の口から語られた記憶も、写真に写る特攻兵士たちの笑顔も、過去の出来事として片付けられるものではなく、今を生きる私たちへの問いかけである。多くの犠牲を生んだ原因を見つめ、反省を重ね、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう誓うこと。それこそが、過去と私たちをつなぐ唯一の道であり、静かに胸に刻まれるべき記憶なのだ。
― 私はそう信じている。
藤井ヨシカツ
「出撃アト五指に足らず」 アーティストブック概要
・限定80部(エディションナンバー・署名入り)
・写真、文章、デザイン、編集:藤井ヨシカツ
・編集協力、企画構成:後藤由美(リマインダーズフォトグラフィーストロングホールド)
・英語翻訳:小木曽(新谷)織音
・サイズ:185mm×265mm×40mm
・ページ数:318ページ
・重さ:約990g
・言語:日英言語を選択していただけます。
・価格:44,000円(税込・送料別途)
⚠ ご注意事項
* ご注文確定は、お振込確認後となります。
* 本作は制作に時間を要するため最長6ヶ月程度お待ちいただく場合がございます。代金のお振込確認後、納期の目安をお知らせいたします。
* 一定期間お振込・決済の確認ができない場合は、自動的にキャンセルとさせていただきます。
* お届けは宅配便での発送となります。
ご注文をご希望の方は、以下のフォームよりお申し込みください。
フォームへの直接リンクはこちら → https://forms.gle/K31fcFBwjJqFhnfk6












