アトラスラボ・マスタークラス 現実の再構築 ──ドキュメンタリー、フィクション、そして表象の政治 講師:マックス・ピンカーズ+後藤由美

■ 概要
このマスタークラスは、リマインダーズ・フォトグラフィー・ストロングホールドが展開する実験的ワークショップシリーズ「アトラスラボ」の特別編として開催されます。講師を務めるのは、写真における「現実」と「構成」「演出」と「記録」の関係性に踏み込み、報道写真や記録形式に依拠するドキュメンタリーの枠組みを、演出・虚構・批評的再構成によって再定義しようとする実践を展開する写真家・研究者のマックス・ピンカーズ、そして、社会的背景に根ざした長期的プロジェクトを支援し、作家とともに編集・構成・発表の道筋を築いてきたRPSキュレーターの後藤由美です。
報道性や信頼性といった写真表現の前提を批評的に捉え直すマックスの姿勢と、当事者性・語り・歴史との関係を深く見つめてきた後藤の視点が交差することで、本マスタークラスは、写真における「見る/見せる」「記録する/演じる」「作家として関与する」という関係性の再構築を試みます。
参加者は、それぞれが取り組んでいる進行中のプロジェクトをもとに、「構成(編集)」「語りの手法」「作者としての立ち位置」「表象の倫理」など、作品を成り立たせる多層的な要素について、個別・集団のセッションを通じて検討・深化していきます。
5日間の過程では、前半2日間で講師によるレクチャーと参加者によるプロジェクトの壁面提示、課題と目的の明確化を行います。この過程では、グループでの議論に加え、マックスと後藤の両名からそれぞれ個別のフィードバックセッションが設けられます。各自の課題や検討軸を中間制作に向けて具体化するための対話が行われ、その後の3日間では、さらなる個別セッションとグループでの講評を通じて、プロジェクトの方向性を見つめ直し、再構成していくプロセスに入ります。
このマスタークラスは、他者からのフィードバックを受け止めつつも、自らの判断でプロジェクトを前進させていく意欲のある方にとって、豊かな検証と試行の機会となるでしょう。完成形を求めるのではなく、問いや葛藤を抱えながら模索を続ける作家に向けた、実験と構成のための時間です。


■ 日程
2025年12月8日(月)・9日(火)+ 16日(火)〜18日(木)[全5日間]
※詳細な日程構成は、参加決定者のみに共有されます。


■ 会場
リマインダーズ・フォトグラフィー・ストロングホールド(東京都墨田区東向島2-38-5)


■ 講師
・マックス・ピンカーズ(Max Pinckers)
・後藤由美(Yumi Goto / RPS)


■ 対象
・ドキュメンタリーまたはリサーチに基づく写真プロジェクトに取り組んでいる方
・作品をより深く発展させたいと考えている写真家・アーティスト
・経験やキャリアの年数は問いませんが、進行中のプロジェクトをもとに議論や検討を深める意欲がある方


■ 募集人数
・最大12名(事前選考制)

・応募者多数の場合は、提出内容をもとに選考を行います。選考結果はメールにて通知いたします。


■ 参加費
75,000円(税込82,500円)


■ 進行言語
・プログラムは基本的に英語で進行されます。
※ただし、日本語話者が多数の場合は、通訳を介して進行する可能性があります。
・これまでにも日本語圏と英語圏の参加者が混在する事例は多く、近年では翻訳・通訳ソフト等を活用しながら、各自が柔軟に対応しています。
・英語での会話が可能であれば望ましいですが、言語の違いが大きな障害となることはほとんどありません。


■ 参加にあたっての条件
・ノートパソコンを持参できること
・Photoshop / Lightroom 等、基本的な画像編集ソフトを使えること
・プロジェクトの構成資料(写真プリント、図版、メモなど)を事前に準備できること
・Adobe InDesign などのDTPソフトのスキルは必須ではありませんが、使える方には推奨します
・オープンで柔軟な姿勢をもって、異なる視点や提案を受け止めながら作品を展開する意欲があること


■ 進行構成(予定)
・初日:講師によるレクチャー、参加者プロジェクトの壁面プレゼンテーション

・2日目:講評・個別対話をもとに、課題の再設定・構成し直し

・中間:1週間の自己制作期間

・後半3日間:プロジェクトの発展、再考、最終プレゼン・講評


■ 応募方法
以下のGoogleフォームにて、必要事項を記入・送信してください。
※応募締切:2025年10月12日(土)日本時間 23:59まで
※提出資料(すべて日本語または英語)

・プロジェクト概要(A4/1枚以内)
・作品画像10〜20点(PDFまたはJPG)
・簡単な自己紹介と応募動機(400字程度)

*万が一、下記のフォームが正しく表示されない場合は、以下のリンクからフォームにアクセスし、応募を完了してください。
https://forms.gle/ZTZBRW8fg7fq6vWw7




from the series Two Kinds of Memory and Memory Itself, 2015 © Max Pinckers

Margins of Excess, installation view, Double Bind, solo exhibition by Max Pinckers, FOMU – Fotomuseum Antwerp, Antwerp, 2021-2022.

Margins of Excess, installation view, Double Bind, solo exhibition by Max Pinckers, FOMU – Fotomuseum Antwerp, Antwerp, 2021-2022.

Margins of Excess, installation view, Double Bind, solo exhibition by Max Pinckers, FOMU – Fotomuseum Antwerp, Antwerp, 2021-2022.

Margins of Excess, installation view, Double Bind, solo exhibition by Max Pinckers, FOMU – Fotomuseum Antwerp, Antwerp, 2021-2022.

From the series Lotus, 2011 © Max Pinckers & Quinten De Bruyn

Jay J Armes, from the series Margins of Excess, 2018 © Max Pinckers

Margins of Excess book © Max Pinckers

Margins of Excess book © Max Pinckers

Margins of Excess book © Max Pinckers

People Exiting the Metro at Yonggwang Station, Pyongyang, North Korea, from the series Red Ink, 2018 © Max Pinckers

from the series Margins of Excess, 2018 © Max Pinckers

Red Ink, 2018 © Max Pinckers

Red Ink, 2018 © Max Pinckers

The Horse to be Sacrificed must be a Stallion, from the series Will They Sing Like Raindrops or Leave Me Thirsty, 2014 © Max Pinckers

Will They Sing Like Raindrops or Leave Me Thirsty, 2014 © Max Pinckers

Zindagi, from the series Will They Sing Like Raindrops or Leave Me Thirsty, 2014 © Max Pinckers


講師について|

マックス・ピンカーズ(1988年生まれ、ベルギー)は、インドネシア、インド、オーストラリア、シンガポールで育ち、現在はブリュッセルを拠点に活動しています。彼の作品は「ドキュメンタリー写真とは何か」という問いを投げかけるもので、映画のような照明や演出をあえて取り入れながら、演劇的・協働的なアプローチを試みています。ピンカーズにとって写真とは、現実をそのまま記録する以上に、想像力を広げ、異なる「真実の形」を探るための実験的な表現手段です。徹底したリサーチやチームとの共同作業に即興性を組み合わせることで、批評的でありながらも生き生きとした、同時に詩的なイメージを生み出しています。

これまでに自費出版の写真集や展覧会で多くの作品を発表しており、代表作に『The Fourth Wall』(2012)、『Will They Sing Like Raindrops or Leave Me Thirsty』(2014)、『Margins of Excess』(2018)、『Red Ink』(2018)、『State of Emergency』(2024)があります。ゲントのKASK芸術学院で客員講師を務め、2015年エドワード・スタイケン賞(ルクセンブルク)、2018年ライカ・オスカー・バルナック賞など、国際的な賞も多数受賞。独立系出版社「Lyre Press」や「The School of Speculative Documentary」を共同設立し、現在はアントワープのギャラリー・ソフィー・ヴァン・デ・フェルデ、ロンドンのトリスタン・ランドに所属しています。
https://www.maxpinckers.be/